2012年11月4日日曜日

コリアタウンのラティーノ労働者支援 ②

ロサンゼルス・コリアタウンで働くラティーノ移民労働者を支援する団体を訪ねた。
午前中に英語教室とパソコン教室を見学した後、スタッフらと近所の韓国料理店で昼食をとった。

店内にはテーブル約30台が並び、計約100人の客がビビンパやキムチチゲなどを食べている。そのほとんどが、コリア系アメリカ人というより、韓国から来た韓国人という感じだ。
昼食に来たスーツ姿の会社員らしき人はいるが、観光客のような人は見当たらない。ソウルに来たのかと目を疑う。

昼食を食べに来た韓国人らでいっぱいの韓国料理店=ロサンゼルス・コリアタウン、2012年11月1日撮影

もちろん飛び交う言葉は、客も店員も韓国語だ。
僕のテーブルは、僕を含めて日本から来た学生2人、その団体を取材中のフィリピン系アメリカ人のカメラマン、香港系アメリカ人とグアテマラ系アメリカ人のスタッフ2人の計5人だった。アジア系が多いためか、店員のおばちゃんも韓国語で話しかけてくる。

僕は牛肉スープと石焼ご飯のセットで約5ドル。米は紫色の古代米のような種類で見た目にも楽しい。韓国と同じように、無料のキムチもついてくる。日本の友人はソルロンタンのセット(約6ドル)を食べていた。これもおいしそうだ。

牛肉スープと石焼ご飯のセットは約5ドル。味も量も申し分ない。
食事を楽しみながら、この団体にとっても最も重要な活動である労働者支援について話を聞いた。
コリアタウンでは、多くのラティーノ労働者がスーパーマーケットやレストランで働いているが、雇用者が最低賃金を守らなかったり、残業代を支払わなかったりするケースは後を絶たない。

団体が支援した、あるメキシコ人労働者は過去4年間に6万ドル(約480万円)の賃金不払い被害にあった。団体は労働者とともに、雇用者に抗議するとともに、カリフォルニアの労働基準監督署(The Division of Labor Standards Enforcement)に訴えた結果、雇用者に支払い勧告が出されたという。
しかし、勧告には法的拘束力がないので、雇用者がきちんと支払に応じないことも多い。
そのため、労働者が一定の不払い賃金を確実に取り返す妥協策として、支払要求金額を減額して決着するケースも少なくない。
結局、この労働者は妥協案をとって、3万ドル(約240万円)を取り返したらしい。

そんな話をしながら、若手スタッフが「これじゃ半分じゃないですか」と不満をもらすと、先輩スタッフが後輩の気持ちを理解しつつも「妥協案をとるかどうかは、もう労働者個人の判断だから、私たちはどうしようもないよ」と話していた。

団体パンフレットによると、彼らは1992年の設立以来、不払い賃金計1千万ドル(約8億円)以上を労働者のために取り返したという。膨大な不払い賃金は、移民労働者の置かれた厳しい状況をよく示している。
経済的搾取の対象になりやすいうえ、英語も苦手な移民労働者にとって、こうした団体の支援ほど心強いものはないだろう。
くわえて、移民労働者のなかには、合法的な入国また滞在資格を持たない非合法移民も多い。彼らは搾取されていても強制送還の恐れから表立って雇用者に立ち向かえない。団体は、こうした非合法移民労働者の支援も積極的に行っているという。

団体の資金は、寄付や公的な助成事業などで賄われているものの、もちろん潤沢とはいえない。団体の代表は、スタッフやボランティアの「献身(dedication)」なしには活動は維持できないと話していた。

・この日の午前の様子は、こちら

0 件のコメント:

コメントを投稿