2012年7月8日日曜日

エスニック料理店と多言語サービス

ロサンゼルスのダウンタウン。Broadwayと4th Streetの交差点近くに「PANDA KING」という安い中華料理店がある。
タコスとハンバーガーだけでは、どうしても胃の落ち着きがわるいので、旅行先では中華料理がありがたい。味付けはアメリカ風だが、焼き飯、焼きそば、一品の3.28ドルセットで、おなかいっぱいになれる。

店を仕切るのは、上海出身の中国人夫妻。客席では、小学生の息子がおもちゃで遊んでいる。アフリカ系やラティーノ、アジア系の客がぼちぼち入ってくる。
夫妻は、子どもと中国語で話し、客に英語で対応する。ロサンゼルスでは珍しくないエスニック料理店の姿だ。

この店は中に入ると、南側の壁が一部取り払われており、隣のメキシコ料理店「TACO DON CARLOS(カルロスさんのタコス)」と内側でつながっていた。まあ、そういう設計もあるだろうし、どっちの料理も食べられるのでわるくはない。
すると、中華料理店のお父さんが隣の店に入っていった。メキシコ料理店の店員とちょっと話でもするのかな、と眺めていると、そのまま注文カウンターの内側に入って、ラティーノが中心の客に対してスペイン語で接客を始めた。
「Para aqui?(店内で食べますか)」と発音もなかなかいい。
つまり、ここは中華料理とメキシコ料理の別々の店ではなく、同じ中国人が経営する一つの店だったわけだ。お父さんによると、彼らはここで20年商売をしているらしい。メキシコ料理もスペイン語もここで生活するなかで覚えていったという。


中華料理店「PANDA KING」(左)とメキシコ料理店「TACO DON CARLOS」(右)は同じ中国人が経営している=ロサンゼルス・ダウンタウン、4日撮影
ここダウンタウンでは道行く人のほとんどがスペイン語を話している、とさえ感じる。低価格でボリュームある食事を求めて店内に入ってくるラティーノが顧客であれば、それにあわせて、スペイン語で接客することは、必要性と実益性を兼ね備えた行動といえる。そして、言語だけでなく、メキシコ料理まで扱ってしまう中国人移民はたくましい。

近くのグランド・セントラル市場のペルシャ料理店のおばさんも、店内ではペルシャ語を話しつつ、ラティーノの客に対してはスペイン語で接客していた。友人の話では、韓国系住民が多く暮らすコリアタウンでは、韓国系の客が多いため、韓国系食料品で働くラティーノがハングルを覚えてしまうという。

ここロサンゼルスでは、消費者の多くがスペイン語が母語としている。局地的にコリアタウンではハングルが母語の人も多い。そうして消費者が求める新たなサービスが生まれ、それがこの町の多言語化(スペイン語化、ハングル化)をさらに促進しているようだ。
その国や地域の人々がどのような言語を話すのか。上からの政策と下からの日常にもまれて、単一の言語が普及したり、多言語化が進んだりしていく。

2012年7月4日水曜日

独立記念日2日前、多様につながるロサンゼルス

2日午前11時、ロサンゼルス国際空港に到着した。今回の渡米目的は、8月から暮らすアパートの準備だ。さっそくタクシーでアパートに向かう。

運転手さんはアルメニア人男性。40歳のときに渡米し、20年がたつという。
「ジャパニーズやコリアンもそうだと思うけど、アルメニアンにとっても家族が何よりも大切。私も子どもらのためにずっと働いてきた」と運転手さん。子どもは大学も卒業したという。

アパートに到着。50代後半だろう管理会社の女性マネジャーは、「いつかドイツに住んでみたいの、半年くらい。ドイツには一度も行ったことがないんだけど、私の祖父母がドイツ出身だから」とさりげなく自身のルーツについて話す。

アパートを下見した後、その女性がホテルまで車で送ってくれた。ホテルの受付は、中国か台湾か韓国か東アジア系のお兄ちゃん。その他の従業員はほとんど、スペイン語が話せるラティーノだ。というわけで、このお兄ちゃんもスペイン語が話せる。

ホテルで一休みしてから、近くの携帯電話店でプリペイド携帯を入手。通話さえできれば機能や恰好にはこだわらないので、安い機種をいくつか眺めていると、アフリカ系の若い男性客が「こっちのほうがいいよ」と一言くれる。「たしかに、こっちのほうがかっこいいね」と返事して、30ドルの携帯電話を買った。同時に通話料金100ドルを前払いすれば、1年間はほどほどに使える。


この日の昼ごはんは一皿2.5ドルのチキンタコス。このタコス屋があるグランド・セントラル市場は、1917年からダウンタウンの人々の胃袋を支えている=ロサンゼルス、2日撮影

こちらで会う予定の日本の留学生にさっそく新しい携帯番号を知らせた。

国と地域でいえば、アルメニア→ドイツ→東アジア→ラテンアメリカ→アフリカ系→日本、につながる人々と、半日の間に、何かしらのコミュニケーションを持った。

さきほどの女性マネージャーは「勉強で忙しいでしょうけど、ディズニーランドに行ったほうがいいわよ」とすすめる。それもいい。
けど、僕にとっては、むしろディズニーランドの外側のほうが刺激的なようだ。
7月4日はアメリカ独立記念日。ロサンゼルスでも花火大会などいろいろな催しが予定されている。アメリカに暮らす人々の間でも、この「独立」をどう考えるのかさまざまだろう。
そうだとしても、さまざまな人々を「アメリカ」に結びつける、もしくは、結びつけようとする一年に一度の象徴的な日であるにはちがいない。