2012年10月7日日曜日

アメリカ大統領選、ヒスパニック/ラティーノ有権者

たまたまアメリカの公共放送PBS(the Public Broadcasting Service)を見ていると、興味深いインタビュー番組を放送していた。

インタビューを受けているのは、全米で毎日平均200万人の視聴者をもつというスペイン語ニュース番組「Noticiero Univision(ノティシエロ・ウニヴィシオン)」のメインキャスター2人だ。

アメリカでは中南米、カリブ海系の、いわゆる「ヒスパニック/ラティーノ」が約3500万人(総人口の12%、2010年国勢調査)暮らしており、最大のマイノリティ集団となっている。

そうしたラティーノコミュニティに対して、「Noticiero」は、スペイン語で世界情勢、自然災害、大統領選挙など国内外を問わず幅広く報道している。ちなみに「Univision」は放送局名だ。

PBSでインタビューを受けたキャスター2人は、メキシコ系アメリカ人2世のマリア・エレナ・サリーナス(Maria Elena Salinas)と、メキシコ出身でアメリカ国籍もあるホルヘ・ラモス(Jorge Ramos)。2012年大統領選とラティーノ有権者の動向について語っていた。

ラティーノ有権者は民主党支持者が比較的に多いが、サリーナスとラモスも基本的にはオバマを支持する方向で発言していた。
サリーナスは「ラティーノ有権者は大統領選挙の結果を握る集団です。ということは、今回はオバマが勝つということでしょう」。ラモスも、オバマ大統領の移民政策に物足りなさを感じつつも、オバマ大統領が指示したドリーム法案などを評価している。

共和党候補ロムニー氏については冷ややかだ。ロムニー氏は、ラティーノ有権者へのアピールも含め、父親がメキシコで生まれたことを明らかにしている。英語版ウィキペディアによると、アメリカ市民の祖父母がメキシコで生活していたときに生まれた子どもということらしい。
また、ロムニー氏の息子がなかなか流ちょうなスペイン語でロムニー氏への支持を訴える選挙CMを流している。
キャスター2人は、父親の出生話とスペイン語CM自体は歓迎しつつも、「父がメキシコ生まれで、自分がラティーノであると認めない人はいない」(ラモス)、「細かい政策を見ていくとラティーノの期待に沿うものではない」という趣旨でインタビューに答えていた。

大統領選におけるラティーノ有権者へのアピールについて、ラモスは「私はこれをコロンブス症候群と呼んでいるんですが、ラティーノは4年に一回(大統領選のたびに)、『再発見』されて、また残りの3年間は忘れられてしまう」と皮肉っていた。

最後に、この大統領選の争点としては、ラティーノ住民の失業率の高さを引き合いに「経済・雇用」をあげていた。この点は人種・エスニシティを問わず、同じ問題意識を共有している。また、アメリカの移民の歴史を振り返れば、移民排斥の声は経済不況の時に高まる。その意味でも、経済は重要なポイントといえる。

彼らはラティーノコミュニティのスポークスマン的な役割も担っているといえるだろう。
サリーナスが「エスニック・メディアとメインストリーム・メディアという区別がありますが、我々はもうメインストリームなんです。唯一の違いは言葉が違うというだけです」と話していたのが印象的だった。

先日、僕の通っている大学院で講演した著名な社会学者によると、2035年には、これまでマジョリティだった、いわゆる白人はアメリカ人口の過半数を切る可能性が高く、アメリカの未来のリーダーは、こうしたラティーノの若い世代から選んでいく必要があると話していた。
もちろん、中南米からの移民が今後も現在の調子で増え続けるのかという問題はあるとしても、ラティーノが政治的にも文化的にもエスニック・マイノリティではなくなり、ラティーノ大統領が誕生する日が21世紀の前半には来るのかもしれない。

2012年10月6日土曜日

エスニックなロサンゼルスの日本

ロサンゼルスは、グローバルシティともいわれるだけあって、ありとあらゆる国の人々に出会える。
そうした人たちの胃袋を支えるのがエスニック・スーパーマーケットだ。

大多数の移民を送り出している中南米の国々の食材は、もうエスニックマーケットに行かずとも一般のマーケットでほとんど手にはいる状況だが、多くの移民を送り出す中国や韓国などの良質の食材を集めたいなら、やはりエスニックマーケットに行くのがベストだ。

一般のスーパーでは中南米の食材が簡単に手に入る。アボカド(手前)は日本でも一般的だが、ヒカマ(左)やチャヨーテ(右)は日本ではまず食べないだろう。ヒカマはスライスにしてサラダに、チャヨーテはスープの具材にぴったり

ありがたいことにロサンゼルスには、戦前から日本人移民の集住地であったこともあって、今日でも日系スーパーが10数件ほどある。かつお節であれ、うまい棒であれ、日本の野菜(こちらでは一般的ではない、日本のキュウリなど)であれ、だいたいのものは手に入る。もちろん、ものによっては値段が高いけど、これがないとあの和食が作れないといった材料であれば、買う価値があるだろう。もちろん商品説明などの案内もすべて日本語だ。

先日、そのうちの一つに買い物へ。サンマ2尾が1.5ドル(120円相当)で売っていた。魚の中ではサンマが一番好きなのと、こちらに来てから肉食が中心だったので、気分も高まる。ついでに納豆も買って、その日の夜に食べた。サンマも鮮度は落ちておらず、肝の味まで日本で買った場合と変わらなかった。

サンマ、納豆、味噌汁、ごはんと日本と変わらぬ食材が手に入るロサンゼルス。質素・・・

さらに、スーパーと併設したフードコードでは、日本でも有名なラーメン店や天丼屋などの食事が食べられる。サンマもおいしかったし、ここは間違いないということで、後日、アメリカ人の友人と妻の3人でラーメン屋に食べにいった。

ロサンゼルスでは近年、日本のラーメンの人気が高まっており、そのアメリカ人の友人もかなりのラーメン好きだ。喜ぶだろうと思って彼を誘ったものの、実際に食べてみると、日本の店舗で食べる商品とまったく違っていた。
スープはそこそこ同じだけど、麺は明らかに別物。太いあげ麺をふやかしたような麺でコシもなく味もわるい。
「残すのは申し訳ないけど」と言って半分以上残したアメリカ人の彼は、最後に「本当においしいラーメン店があるから、こんど連れて行ってあげる」と言ってくれた、というか、言われてしまった。アメリカのラーメンはアメリカ人に聞いたほうがよいかもしれない。

ところで、こうした日系スーパーは、ロサンゼルスで暮らす日本人の情報交換の場ともなっている。
とくにスーパー入口に山積みされた「羅府テレフォンガイド」は必携らしい。ロサンゼルス内の飲食店、病院、弁護士事務所、料理教室などの電話番号が日本語で書いてある。また、自動車を購入したり、病院に通ったりする場合などの生活アドバイスも充実しており、ロサンゼルスで生活を始めたばかりの日本人にとって大きな助けになるだろう。

羅府テレフォンガイド
ロサンゼルスは日本人が7万629人住んでおり、世界で最も日本人が多く住む海外都市だ。外務省の海外邦人数調査統計(2011年10月1日現在)によると、そのあとは上海(5万6481人)、ニューヨーク(5万4885人)、大ロンドン市(3万6717人)、バンコク(3万5935人)と続く。
ロサンゼルスの日系の都市としての基礎は、戦前の日本人移民が築き上げた。そうした歴史的な都市に、戦後も日本から人々が移り住み、これらの日系スーパーに象徴されるような、日本人のエスニックコミュニティをつくりあげている。

2012年10月1日月曜日

アメリカで学ぶ中国人留学生

先日、アメリカで東アジアに関係することを勉強している留学生らの交流会に参加した。

さまざまな分野で勉強する学生30人ほどが集まった。ほとんどの学生は日本、中国、台湾、韓国出身。今年、僕の在学している大学の大学院には、約1700人の留学生が入学したが、その8割以上が中国人だった。というわけで、ここに集まる学生も比較的、中国出身の若者が多い。

留学生はアメリカの法律上は、出身国に帰る予定の人という意味で「非移民」ということになっている。けれど、現象としては、ある国から、ある国へ移動している移民だ。
くわえて、アメリカに留学した外国人が「非移民」の想定に反して、出身国に戻らないケースも少なくない。戻らない理由は、経済的、政治的、社会的、文化的といろいろある。
専門的な知識や技術を持った人たちがアメリカに渡って、そのまま住み続けた場合、彼らの送金が出身国の経済を一部支えることもあれば、「頭脳流出(brain drain)」して人材を失うこともありうる。

というようなことを考えながら、その日出会った中国人学生らが、アメリカで学位をとったあと、どこで働くつもりなのか、聞いてみた。

ある学生は行政学を勉強中。「できたら、アメリカにとどまりたい。こっちの生活が好きだから」。将来の仕事は、政府関係やNPOなどで働きたいとのこと。「政府ってアメリカ政府ですか。アメリカの市民権がないと難しいんじゃない」と聞くと、「市民権はとろうと思えばとれますよ」とあっさり答え、アメリカ国籍への帰化も視野に入っているという。

別の学生は「とても難しい問題。私は社会運動を勉強しているから、自分の国ではなかなか仕事するのが難しいかもしれない。自分の国でもちゃんと安心して働ける場所があるなら、ぜひ帰りたいけど」。

この交流会ではない、別の機会で出会った学生は建築学を勉強中。その学生は「中国のほうがいろいろと建設事業を展開する土地がいっぱい残っているから、中国に戻って働くつもり」とのことだった。

ただ、全体としてはアメリカにとどまりたいと思っている学生がやや多いのではないかという印象を受けた。

この8月まで勉強していた日本の大学院でも、留学生のほとんどは中国出身の若者だった。おかげでいい友達もたくさんできた。日本学生支援機構によると、2011年5月1日現在、日本で学ぶ中国人留学生は8万7千人という。一方、アメリカ政府の国際教育研究所によると、アメリカで学ぶ中国人留学生は15万8千人で日本よりはるかに多く、留学生の出身国別ランキングも世界1位という。

アメリカまた日本は、それぞれ中国と経済摩擦や領土問題などで対立する一方で、実際には、かなり数の中国人留学生を積極的に受け入れている。もちろん、アメリカや日本から中国に留学する学生も多い。国家間の対立が目立てば目立つほど、こうした国境を越えた若者の移動と、それに伴う個人的な交流が多ければ多いほうがよいと思う。

※ちなみに、アメリカで学ぶ日本人留学生は、1997~1998年は約4万7千人で世界1位だったが、2010~2011年は約2万1千人で7位となっている。関連記事は、こちら

2012年9月15日土曜日

移民支援の英語教室②、誰でも受講できる

カリフォルニア州の一部の地域では、格安の授業料で英語教室を受講することができる。
100年以上前から移民を受け入れてきた国の伝統ともいえるだろうか。
どこで英語教室を受けることができるか、ネットを使えば簡単に見つけることができる。

妻が通い始めた成人向けコミュニティスクールは「3ヶ月、週4回、一回3時間」で、わずか20ドル(1600円相当)と前回の記事で報告したところだが、もっと内容が充実していたらしい。
週4回の授業は月~木曜日にあるけど、なんと希望すれば金曜日も会話練習(3時間)を受講できるらしい。
ということで、妻はそれにも通い始めた。

最初の会話練習の参加者は、メキシコ、イラン、ブラジル、エルサルバドル、インドネシア、フィリピン、ブルガリア、キューバ、エチオピア、日本、韓国、中国など出身の35人くらいが参加。会話練習の定員は40人で、2回以上欠席すると除籍になるらしい。
というのも、10人以上がウェイトリストで受講できるのを待っているからだ。

授業が始まると、まずは自己紹介。その後、それぞれの国の名前の付け方などを紹介しあった。
「わたしの国では、政府が名前リストを持っていてそこから選びます」
「おじいちゃんが最初の孫の名前を付けます」
「生まれた日の暦にちなんだ名前を付ける人が多いです」
「占星術で決めます」というわけで、決め方はそれぞれの国でいろいろ。
妻としては「親の名前にちなんでつけたり、名前の本を買ったり・・・親が自由につけたり」と説明した。まあ、日本の場合、なんでもいいというわけだ。

その後、25分ほどの英語学習用ドラマを見て、内容に対する感想をそれぞれ英語で表現した。
妻いわく「けっこう難しいよ。そもそも英語を聞き取れないと意見いえないし、わかっても4割くらい。直接の会話だとある程度わかるのに、テレビになるとなんで難しいんだろう」とのこと。

月~木曜日の英語教室の先生は、外国人に英語を教えて17年と経験豊富。金曜日の会話練習の先生も教えなれてて感じがいい。

この英語教室の受講するには、書類審査も面接審査もない。なので、日本から観光ビザで渡米しても申し込んでも大丈夫らしい。
教室の要綱には「人種、肌の色、エスニック集団、国籍、祖先、宗教、年齢、結婚・未婚、妊娠、身体・精神的障害、健康状態、退役軍人、ジェンダー(社会的性差)、遺伝情報、性別、性的志向、そして、このような様々な特徴の感じ方、にかかわらず、だれでも受講できます」と書かれてある。この内容は1964年の市民権法と通じるので、どのように関係しているのか知りたいところだ。

とくに興味を引いたのは「このような様々な特徴の感じ方」という部分。つまり、人種にしても、宗教にしても、それを何ととらえるかは個人差があるので、そうしたそれぞれの「とらえ方」の違いもすべて受け入れるということ。「法的な立場」という項目は見当たらなかったけど、クラス分けの面接で「なんで英語を学びたいの」以外はほぼ一切何も聞かれないということからすると、非合法移民でも受講することができそうだ。

というわけで少し話を戻すが、すでに日本で仕事をしているなど、ある程度、経済的に安定した状態で、しばらく休職して実践的な英語力を高めたい人には、とてもいい選択肢になるだろう。

そして、なによりも『周りに日本語を話す人がいない・少ない』という、この教室の環境は、実践的な英語力を伸ばすうえで決定的な要素といえるだろう。

2012年9月12日水曜日

移民支援の英語教室①、出身も動機もいろいろ

妻「メキシコの人は5人家族なんだって。子どもが3人いて、いちばん下の子は生後4週間なんだって」
僕「仕事は何してんの」
妻「いまは仕事がないみたい」
僕「どこに住んでんの」
妻「近所のアパート。同郷のメキシコ人が多いって。スペイン語が話せる人が多くていいですね、って言ったら、『もっと英語が話せる環境のほうがいいよ』って」

妻が近所の成人向けカルチャースクールで、外国人を対象にした英語教室に通いだした。
そこで出会ったメキシコ人の35歳くらいの男性の話をしてくれた。

妻が受けている中級コースは、12月中旬までの3ヶ月間、週4日、一日3時間で授業料はわずか20ドルだ。移民の国アメリカでは、地域に根付いた移民支援サービスが整っていると聞いてはいたが、たしかにその通りだった。
このコースでは、30人くらいの外国人が参加しているらしい。
メキシコ、ホンジュラス、エチオピア、ドイツ、中国、インドネシアなど、いろいろな国の人々と出会う機会を得て、妻も楽しんでいるようだ。

英語教室のテキストは36ドル
彼らが英語を学んでいる理由もいろいろ。インドネシアの中年の女性は、娘さんが働いているアメリカに6ヶ月間だけ滞在しているついでに英語の勉強。けっこう英語が上手なメキシコ人の女性は「もっと英語を上達させたいの」。妻は「英語がうまく話せるようになりたいのと、知り合いとかつくるため」というわけで通いだした。

さきほどのメキシコ人の男性に話を戻すと、彼が英語教室に通う理由は「need(必要だから)」と一言で答えたという。趣味の延長か、生活の延長か。「いろんな人生があるんだなあ」と妻も感慨深げに話していた。

ところで、9月16日はメキシコの独立記念日。英語教室の会話練習でも、それぞれの国の祝祭日について話したらしい。
ちょうど、この日は僕が大学に向かう電車の中、新聞が座席に置いてけぼりだったので、手に取って読んだ。スペイン語圏の住民を対象にしたコミュニティ紙のようなものだった。
9月15日はエルサルバドール、グアテマラ、コスタリカ、ニカラグア、ホンジュラスの独立記念日であり、メキシコでも独立記念日前夜ということで重要な日だ。
この新聞も、独立記念日に絡めて、これらの国から来た移民の連帯をテーマにした企画紙面を盛り込んでいた。

「この企画紙面は、われわれのルーツを失わないように、その歴史、文化、観光地、郷土料理、祝賀イベントなどを取り上げます。故郷はいつもそこにあり、けして忘れることはありません」(少しだけ意訳)

スペイン語新聞には「ロムニー氏が勝利したら、移民政策改革はないでしょう」とオバマ氏の再選を支持するカリフォルニア州議会議員(民主党)のインタビュー記事も

※この日はアメリカ同時多発テロ「9・11」から、ちょうど11年。大学キャンパスでは、テロ被害者を追悼するため、小さな国旗300本ほどが歩道わきの芝生に立ててあった。

・英語教室の話の続きは、こちら

2012年9月6日木曜日

アメリカ大統領選に見る人種エスニシティ

8月下旬から留学先のロサンゼルスの大学院で授業が始まった。
9月5日、移民研究の授業の冒頭、先生が「昨日の民主党の全国大会を見た人?」と質問した。
「見ました。先日の共和党の全国大会と比べると、まるで別の国のことみたいですね」と答えると、先生は「本当に別の国みたいね」とうなづいた。

全国大会とは、民主・共和の両党が4年に一度の大統領選の候補者をそれぞれ決定する大会のことだ。
2012年は、民主党からは現職バラク・オバマ氏、共和党からは前マサチューセッツ州知事のミット・ロムニー氏が候補者となる。

しかし、同じアメリカ国内で行われていることなのに、なぜ「別の国」なのか。
それは、民主党と共和党、それぞれの全国大会に出席している聴衆がまるで違うからだ。
8月27~30日にあった共和党全国大会では、会場を埋めた聴衆の100%近くが白人だった。
一方、9月4~5日(会期は6日まで)にあった民主党全国大会では、アフリカ系、ラティーノ、アジア系、白人・・・と多様な人種エスニシティを背景とした人々だった。

オバマ氏の再選に向けて応援演説するビル・クリントン元大統領。会場を埋めた聴衆はアメリカ国内のさまざまな人種エスニシティ集団を反映していた=現地テレビ映像より、2012年9月5日撮影

民主党と共和党の違いは、大きな政府/小さな政府の選択、同性婚や中絶の是非など、いろいろあるが、移民の受け入れ方にも違いがある。
正規の入国・滞在資格がないまま、アメリカで生活している非合法移民に対する姿勢もだいぶ異なる。
オバマ大統領は2010年、子どものころに親に連れられて入国した非合法移民の若者に対して、一定の条件で合法化の道を開く通称「ドリーム法案」の成立を目指したが、共和党の反対で法案は成立しなかった。ただし、大人を含めた非合法移民の強制送還の数は、オバマ政権になって増加しており、非合法移民自体を認めているわけではない。

非合法移民の若者をめぐる問題は、大統領選でも、民主党が有権者に支持を訴える一つのポイントとなっている。
9月5日の民主党全国大会で応援演説に立ったクリントン元大統領もこう訴えた。

「子どものころにアメリカに連れてこられたすべての若者に対して、アメリカにおける機会の平等を保証することによって、彼らが軍隊や大学で活躍できる道を開くという、オバマ大統領の判断を正しいと思うなら、あなたたちはバラク・オバマに投票しないといけない」と、ドリーム法案の内容にふれた。

前日9月4日の応援演説には、テキサス州サンアントニオ市の若手市長フリアン・カストロ氏(37)が大抜擢された。「オバマ大統領はドリーマー(ドリーム法案対象者)の若者たちのために行動を起こした」とオバマ氏の政策を支持。非合法移民の若者にはメキシコ出身者が多いが、メキシコ移民三世のカストロ氏をこうした大舞台に呼んだことも、中南米出身の移民(ラティーノ)に対する民主党の姿勢をはっきりと示している。
もちろん、共和党員のラティーノもいるし、こうした姿勢が民主党の得票率の上昇にそのままつながるわけはないが、民主党の戦略としてはわかりやすい。

応援演説に大抜擢されたメキシコ移民三世のフリアン・カストロ市長=現地テレビ映像より、2012年9月4日撮影

社会学者ダグラス・マシーらの調査によると、特に2000年以降、アメリカでは伝統的な移民受入州であったカリフォルニア、ニューヨーク、テキサス、フロリダ、イリノイの各州だけでなく、それまで移民受入州ではなかったジョージア州やノースカロライナ州などでもラティーノが増加傾向にあるという。

アメリカは2008年、アフリカ系としては初めてのオバマ氏を大統領に選んだ。当時、新聞記者だった僕は赴任していた県で、県内在住のアメリカ人にオバマ氏当選の感想を聞いてまわった。ある女性は「アメリカがやっとアメリカになった」と涙していた。
アメリカでは、ラティーノを中心に人種エスニシティの多様性が広がっていく。それは、将来の大統領選に何かしらの変化を与えることになるだろう。

明日はオバマ大統領の指名受諾演説が予定されている。
(非合法移民の若者たちについての言及はコメントに収録)

2012年9月1日土曜日

非合法移民の運転免許、働く若者たちへ

カリフォルニア州では、仕事に行くにも買い物に行くにも、車がないと生活しにくい。
というわけで、車を買って、自動車保険に加入した。
運転免許については、現在は仮免だが、スムーズにいけば9月中には本免がとれるはずだ。

ちょうど8月、カリフォルニア州議会が非合法移民でも運転免許をとることができる法案を承認した。
アメリカに滞在する資格がないのに、運転する資格はあるというのはどういうことなのか。


ロサンゼルスのダウンタウンを貫く高速道路=2012年7月撮影

アメリカ国内に約1150万人暮らしている非合法移民は強制送還の対象だが、その多くがアメリカ経済を底辺で支える低賃金労働者だ。
とくに非合法移民が多いカリフォルニア州。アメリカ市民や合法移民(広い意味で留学生の僕も含む)と同じように、この地で働く非合法移民にとっても車は欠かせない。

気鋭のネット新聞The Huffington Postなどによると、このカリフォルニア州の法案の背景には二つの要素があるという。

一つは、オバマ大統領の非合法移民関連政策だ。
オバマ大統領は、16歳以下のときにアメリカに入国し、現在30歳以下の非合法移民の若者に限って、正式に労働を許可し、強制送還も控えるという政策を行っている。カリフォルニア州の法案の対象者は、このオバマ政策の対象者ということになっている。

もう一つの理由は、交通安全対策だ。
非合法移民が免許を取得する過程で、交通ルールを知り、自動車保険に加入するようになれば、重大な交通事故を未然に防ぐことができる。このように、ロサンゼルス市長を含めた法案支持者は説明している。アメリカでは、死亡事故の5件に1件は、無免許ドライバーによるものらしい。

後者の理由は、入国管理の問題と交通安全の問題を切り分けることで、政治家が反「不法移民」の有権者の批判を避ける狙いもあるだろう。
重要なのは前者の理由。幼いころ、親とともにアメリカに「不法」に入国した若者たちが、アメリカの市民権はないものの、実質的にはアメリカ人として成長して、アメリカで働いているという現実が、こうした法案を後押ししている。

労働者であるということ、子どもである(であった)ということの二つが重なったとき、そうした人々の現実はいつも力強い。

・The Huffington Postの関連記事は、こちら
・NBC Latinoの関連記事は、こちら