2014年12月27日土曜日

ユダヤ教徒と中国料理、「ジューイッシュ・クリスマス」の過ごし方

クリスマスは日本ではお出かけする日だけど、アメリカでは家族で集まる日だ。
キリスト教徒が多いアメリカでは宗教的な重要性もある。日本ではクリスマスがキリストの誕生日とされていることを知らない人も多いんじゃないだろうか。
アメリカではクリスマスはお休みする商店や飲食店も多い。妻の勤める喫茶店も25日はお休みだった。

2年前、日本のクリスマス感覚で大型家具店のイケアに行くと、イケアだけでなく付近の店もすべて閉まっていた。やたら道路も駐車場も空いているなと思いつつ店まで着いたけど、それはそれでいい勉強になった。

ただ、クリスマスでも確実に盛り上がっている界隈がいくつかあるらしい。その一つがチャイナタウン。ということで、今年はモントレーパーク市のチャイナタウンに妻と昼食を食べに行き、ついでに様子を見てきた。(モントレーパーク市については、こちらの過去記事で)

高速道路はすかすかだったけど、モントレーパーク市内の道路は混んでいた。

高速道路10号線を降りてすぐのショッピングモールは多くの客で賑わっていた。お気に入りの飲茶店の駐車場も混んでいる。それらを通り越し、ある小籠包店に向かうと、店の外まで客が列を作っていた。待ち時間が1時間ほどかかりそうなので、その店の向かいの中国料理店「蝦林記(Har Lam Kee Restaurant)」に入った。

この店はお粥や麺類が人気らしい。店内はほぼ満席で、5分ほど待つと席に案内してくれた。店員さんは基本的に中国語で話しかけてくるから、ほとんど分からないけど笑顔で対応する。
エビワンタン麺とポークリブを頼んだ。繁盛していて料理が来るまで30分ほどかかったけど、エビワンタン麺は海鮮類のエキスが入ったスープで満足。ポークリブもニンニクが効いていて美味しかった。

一杯5.95ドルのエビワンタン麺。期待通りの味だった。

食後は近くの店をいくつか見学。乾物店に入ると、アワビやナマコの乾物などがずらっと並んでいた。中国の乾物を見ると、その食文化の奥深さが伝わってくる。「日本宗谷江瑤柱」という商品も。朝鮮人参(ginseng)もあった。19世紀初頭、中国人に相手にされていなかった新興国アメリカの商人は、アメリカ先住民から朝鮮人参の一種を手に入れて、中国市場に参入していった。ぱっと見は味気ないこの根っこがアメリカ人、中国人、先住民を初期のグローバル市場で結び付けたんだなあ、と思いつつ、店を出た。

日本の宗谷産の干貝柱。100グラム約14ドルの高級品。

その後は車で近くの中国系スーパー「Ranch 99」に立ち寄って中国産の梨「鴨梨(yali)」やココナッツミルクなどを買った。賑やかなチャイナタウンでクリスマスを過ごし、2年前の失敗を挽回できた。

中国系の食材を豊富にそろえるスーパー「Ranch 99」


クリスマス翌日、妻が喫茶店の仕事を終えて帰ってきた。

仕事中に店長にクリスマスはどうやって過ごしたのって聞かれたらしい。
妻が「中国料理を食べに行った」と答えると、店長は「それは『ジューイッシュ・クリスマス(Jewish Christmas)』って言うんだよ」と教えてくれたという。「ユダヤ人のクリスマス」という意味だ。

ユダヤ教徒にとってキリストの誕生日は特別重要な祭日ではないから、クリスマスでもばりばり営業している中国料理店で食事を楽しむ習慣があるらしい。
キリスト教徒の祭日にユダヤ系と中国系コミュニティが食文化を通して結びつくアメリカらしい現象だ。

これは興味深いということで、ちょっと調べてみると、ワシントンポスト(オンライン版)の「ジューイッシュ・クリスマス戦争はもう止めにしよう(The War on Jewish Christmas must be stopped)」という記事を見つけた。筆者は国際政治学の教授だ。

筆者は、ここ15年くらいの間にユダヤ教徒だけでなく、多くのキリスト教徒も「ジューイッシュ・クリスマス」を楽しむようになっている、と指摘。グーグルの検索記録を見ると、毎年クリスマスには中国料理関連の検索数が急上昇し、クリスマスでも営業しているおすすめ中国料理店を紹介するサイトも登場しているらしい。

おそらく敬虔なキリスト教徒と思われる筆者は「親愛なるキリスト教徒の読者へ。救世主の誕生を祝う日は教会に行ってください。もしくは家でゆっくり過ごしてください。少なくとも26日までは映画を見に行ったり、クンパオチキン(中国料理の一つ)を食べたりしないでください」と結んでいる。

たしかに、僕らが行った中国料理店にもアジア系でもユダヤ系でもないようなアメリカ人がちらほらいた。筆者には申し訳ないけど、彼らもジューイッシュ・クリスマスに改宗した人たちかもしれない。

クリスマスも賑わう中国料理店。アジア系ではない客もちらほらいた。

・ワシントンポストの記事は、こちら

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