2013年5月25日土曜日

TA制度と留学生、「入学後」の受け入れ

アメリカ大学院留学、一年目が終わった。
これから8月下旬まで長い夏休みだ。

夏休みが終わると秋学期。はじめてティーチング・アシスタント(TA)をする。

TA制度は、大学院生が教授をサポートする形で教育業務に関わり、大学から奨学金などを得るとともに、将来、大学で教えるための技術を学ぶ制度だ。
具体的には、25人程度の学部生に対して授業(議論の進行)をしたり、彼らの課題を採点したりする。

博士課程の大学院生の多くはTAをする。僕のような英語が母語ではない留学生も担当する。

ただ、実際に、留学生がTAとして学部生に授業をする場合、スムーズに英語が使えるかどうかが問題となる。
僕の大学では、留学生がTAをする場合、英語力を確かめる口頭試験を事前に行う。

その試験に落ちた場合は、夏休みの間に英語の授業を受けないといけない。
不合格は一時的には悔しいけど、英語の勉強ができることは、むしろありがたい。
英語の授業は授業料が発生するけど、僕の大学の場合、留学生が所属する学部などが支払ってくれることが多いようだ。

「どっちに転んでもいいや」という気持ちで、僕も先日、試験を受けてきた。


試験では、受験者は与えられたテーマについて説明する。
僕の場合は歴史学部ということもあってか、「colonialism(植民地主義)」か「revolution(革命)」を選んで説明せよ、ということだった。

僕は「colonialism」を選んだ。ちょうど今学期の最後の授業が植民地主義関係だったので、やりやすいテーマだった。

試験当日は、試験官2人から、自分の研究について5分ほど質問を受けた後、「colonialism」について説明した。
試験官は、学部生が質問するだろうと想定した質問をばんばん挟んでくる。
彼らは受験者の意見や「正解」を求めているのではなく、そうした質問が授業で出てきた場合に、それをTAとして建設的な議論につなげていけるか見ているようだ。

15分ほど時間がたったところで、試験が終了した。
すると、試験官の一人の女性が「私も植民地主義の遺産の一人よ」と言った。「どういう意味ですか」と僕が聞くと、「私の父はオランダ人、母はインドネシア人なの」と教えてくれた。
インドネシアは、第二次世界大戦中に日本が南方作戦で占領するまでオランダの植民地だった。
植民地主義は過去のことではなく、いろんな形で現在につながっていると、予期せぬところで改めて実感する機会となった。

試験翌日の昼、結果が分かった。合格していた。


僕の通う大学は、アメリカで最も留学生が多い大学の一つだ。
年間に9千人以上の留学生を受け入れている。

世界中から届く大量の出願書類を処理して、留学生に入学許可を出すだけでも、大学にとっては膨大な作業だろう。

しかし、留学生の受け入れという観点では、それだけでは足りない。

TAは留学生も担当しないといけない。
当たり前といえば当たり前だけど、厳しい平等主義ともいえる。
けど、留学生の英語力を確かめないまま、大学が留学生にすべて任せてしまうと、結果的に学部生の授業の質に偏りが出る可能性もある。

その意味では、僕が受けた口頭試験は、出身国に関わらず博士課程の学生を平等に扱うことと、学部生の授業の質を維持することを、両立する仕組みとして機能している。

留学生であれ、外国人労働者であれ、移民の受け入れは、彼らが入国した後にどのような生活が送れるかが重要だ。
昨年8月に渡米するまでの2年間、滋賀県で外国人労働者の子どもたちの教育支援活動に参加していた。
移民の受け入れにおいては、「入国後」や「入学後」の支援が不可欠だと痛感した。

TAのための口頭試験は、留学生に対する「入学後」の受け入れ体制の一例として勉強になった。

2 件のコメント:

  1. TAされるんですね。おめでとうございます。

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  2. ありがとうございます。渡米前から楽しみにしていたので、がんばりたいと思います。

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