旅行者ではなく、アメリカに長期間暮らす移民にとって、慣れ親しんだ出身地の食事を続けることは大切なこと。というわけで、買い物を通して、移民社会の様子も伝わってくる。
僕ら夫婦は、ふだんは近所の一般的なスーパー「VONS」などを利用しているが、だいたい月に2回は韓国系スーパー、1回は日系スーパーに行く。
韓国系スーパーは、和食に使う食材も低価格でたくさん置いてある。
先日、ロサンゼルスに来て初めてのお鍋を食べよう、ということで、韓国系スーパーに買い出しに行った。
白菜、エノキ、大根を買い物かごに入れ、次は長ネギを探していると、ハングルで「대파(大葱)」という野菜の商品説明に、日本語でも「東京ねぎ」と書かれていた。
見慣れている長ネギ・白ネギよりは、青い部分が長いが、それを購入した。
大根などはキムチに使われるため、ものすごく安い。この日、買った小ぶりの大根は一つで12円くらいだった。
お鍋の味付けは、中国系スーパーで買った鶏ガラスープの素に、しょうゆ、酒、塩を加えて、味を調えたもの。それに骨付きの鶏肉を放り込んだので、多少そこからダシもとれたと思う。
ところで、土鍋はどうしたのか、というと、日系スーパーで20ドルほどで購入。ついでに、ガスボンベも1.5ドルほどで購入し、日本から持ってきたカセットコンロにはめ込んだ。
味は大満足。ロサンゼルスの冬は、夜になると、けっこう寒いので、味だけでなく温かさも楽しめた。
ロサンゼルスで手に入れた道具と食材で作った鳥鍋 |
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韓国系スーパーでは韓国語、中国系スーパーでは中国諸語、日系スーパーでは日本語が聞こえる。それぞれの地域出身の客が集まる。
お店の客層は、その店がどこの国関係の店であるかだけでなく、その店がロサンゼルス市内のどこの地域にあるかでも、だいぶ変わってくる。
たとえば、ロサンゼルス市の西部にあるショッピングモールは、比較的、白人層の多い地域に立地している。僕のアパートの近くにあるので、ときどき足を運ぶが、客層はいろいろなエスニック集団の人々がほぼ偏りなく来ているようだ。ただ、モール内の映画館は、白人が多い印象を受けた。
一方、ロサンゼルス市中心部に近い地域にあるショッピングモールは、アフリカ系やラティーノが多い地域にあり、客層はほぼアフリカ系とラティーノだ。店内には、アフリカ系の人々の趣向に合わせた美容院なども入っている。
先日、そのモールに妻と買い物に行った。クリスマス直後だったので、商品の値段もぐっと下がっていて、いい買い物ができた。
このモールについては、低所得者が多い地域にあることから、人気クチコミサイトで、アフリカ系の地域住民らが賛否両論のコメントを投稿している。一部の人は、この地域を「ゲットー(低所得の人種エスニック集団が集住する地域)」とも呼んでいるらしい。
ある女性は「私はモールの近所で育って、いつもこのモールを『ゲットー・モール』だと思ってきました。理由は、モールが『ゲットー』にあるからじゃなく、テナント、商品、常連客らがすべてかなり『ゲットー』っぽかったから」と一段落目は手厳しい。しかし、モールは近年、新装開店したらしく、彼女も「ウォルマートがモールの質を下げてはいるけど、リモデルはいい感じ」、「今はけっこう好きです」と印象が変わったらしい。とくに、店内のベトナム人女性らによる、ネイルスパがお気に入りらしい。
アジア系移民の商店でいえば、ほかにもインド人店主のおもちゃ屋さん、中国人のマッサージ店などが出店している。アフリカ系の多く暮らす地域で、アジア系移民が商売をするケースが少なくない。
クチコミサイトで、別の女性は「私は自分の町にある、このモールが好きですよ。(モールや地域についての)ステレオタイプはみんな必要ないんじゃないかしら。だって、嫌いなら来なけりゃいいだけでしょ」。このモール付近では盗難が多いという偏見に対しては、「ビバリーヒルズやオレンジカウンティとか、安全と思われている地域でも、盗まれるときは盗まれます。だから、このモールに悪いイメージを持つ必要なんてないわ」と投稿している。
治安面に関しては、ロサンゼルス市警派出所がモールの中に設けられており、付近の安全を守っている。僕らがモールの駐車場に入ると、パトカーが5台ほど目に入ったので一瞬ギョッとした。安心感がある一方で、モール内に派出所があること自体が地域の治安事情を示している。
いずれにせよ、このモールがあることは、この地域と他地域の物質面の格差を和らげる効果もあるのだろう。
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ベニスビーチ近くの、アボットキニー(Abott Kinney)通りは、個性的な洋服店や小物店が集まっていて、おしゃれな大人が集う場所になっている。
ウィンドウショッピングをしていると、素敵な和風小物店を発見。モダンなデザインの日本の民藝品を豊富に取り揃えている。柳宗理デザインの食器も多く、こだわっているな、と思っていたら、日本人が経営する店だった。
ちょうど妻の故郷・大分県の小鹿田焼(おんたやき)もあり、妻がなつかしがっていた。
僕の好きな鳥取県の中井窯もあるだろうかと探したが、ぱっとは見当たらなかった。
だけど、ちゃんと中井窯の食器はいくつか日本から持ってきた。