この日はユダヤ教の重要な祝日だった。
敬虔なユダヤ教徒である先生。近所のシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)の行事に参加するため、いつものように大学に来て授業をすることができなかった。
たまたま僕の家と先生の家が近かったので、妻に車でさっと送ってもらった。
授業まで少し時間があったので、先生の家の近所を散策していると、いたるところでユダヤ教徒を見かけた。
男性はキッパーという小さな円形の縁なし帽子を頭頂部にのせるようにかぶっており、女性も黒や灰色といった落ち着いた色の服を着ていた。
シナゴーグ付近を歩く、キッパーをかぶったユダヤ教徒男性ら=2012年10月9日撮影 |
少し歩くと、大きなシナゴーグを見つけた。ユダヤ教の戒律に従って調理されたコーシャ食品を売る食料品店やキッパーの専門店なども並んでいる。
この日は、ユダヤ教徒は働いてはいけない日なので、店はすべて閉まっていた。
住宅地に入ると、キッパーをかぶった青年らがアパートのベランダでバーベキューを楽しむ姿もあった。
おそらく、このバーベキューもコーシャ食品を使っているのだろう。
ビバリーウッド地域の中心部に建つシナゴーグ=2012年10月9日撮影 |
先生の家に着き、授業が始まる前にいろいろ聞いてみた。
先生は昨年からロサンゼルスに住んでいる。借家を見つける第一条件は、シナゴーグが近所にあるかどうかだったという。
週に一度の安息日(金曜日の日没から土曜日の日没)には、ユダヤ教徒はシナゴーグに行く。安息日に車の運転は好ましくないため、敬虔なユダヤ教徒の多くは、シナゴーグに歩いて行ける範囲で家を探すらしい。
というわけで、周辺にシナゴーグがいくつかある、このビバリーウッドという地域は、ロサンゼルスで最も大きいユダヤ教徒の集住地だということがわかった。近所には、イラン系ユダヤ教徒や、ヘブライ語を話すイスラエル人(もしくはイスラエル系アメリカ人)もいた。
案内された部屋の本棚には、ヘブライ語の書物がずらり。先生は幼いころにヘブライ語を勉強していたので、それらの本を読むことができるという。
「アメリカに住んでいるユダヤ人の何パーセントくらいが実際に宗教的な生活を送っているんですか」と聞くと、「分からないけど、25%くらいだと思う」と言っていた。
そうこうしているとほかのクラスメイトも集まった。
コーヒーを入れてもらった後、授業中の軽食として生のニンジンも出てきた。
移民に関心のある僕としては、たまたまユダヤ教徒の集住地に来て、好奇心から少々興奮していたため、「このコーヒーとニンジンの組み合わせもユダヤ文化的なものですか」と質問してみた。
先生はやや答えに窮するような表情。そして、正面に座ったアメリカ人のクラスメイトが笑いをこらえるのに必死そうだったのを見て、自分がバカな質問をしていたことに気づいた。
コーヒーとスティックサラダがたまたま一緒に出てきただけだった。今後は気を付けたい。
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