2013年8月16日金曜日

労働運動と地域支援、ボランティア活動を終えて

운전하고 싶은데(運転したいんだけど)」

中国出身のおじさんが言う。おじさんは朝鮮族だから、韓国・朝鮮語が母語だ。

おじさんは右ひじから先、左手首から先がない。
手がなくても運転できるのか、聞いているみたいだ。
おじさんの言う「장애인」という言葉の意味が分からなかったが、韓国人のおばさんが英語で、それは「障害者」のことだと教えてくれた。

おじさんとインターネットを使って、どのように障害者が運転免許を取得できるか調べた。
カリフォルニア州の自動車免許試験場(Department of Motor Vehicles、DMV)の住所を見つけた後、DMVのホームページで障害者に関する情報を探した。
すべてのDMVに障害者の質問を受け付ける特別窓口があることを伝えると、おじさんはほっとしたような表情を見せた。


この日は、ボランティア活動として、コリアタウンの移民支援団体で、5月30日から毎週木曜日に続けてきたパソコン教室の最終日。7月4日の独立記念日を除き、計11回、ラテンアメリカや韓国、中国出身の人たちにインターネットの簡単な使い方を教えた。毎回5~11人が参加した。

これまで、インターネットで地図、写真、ビデオなどを調べる方法を練習し、インターネットを利用する際の注意点も確認した。パソコンの操作方法は何度も繰り返し伝えないと、なかなか覚えてもらえなかったけど、それぞれ少しずつ上達した。

ラティーノにはスペイン語で、韓国人と中国人(朝鮮族)には韓国語で説明するように心がけた。
僕の韓国語は初級レベルなので、はじめの頃は難しかったが、自分が知っている数少ない単語を結び付けて、どうにか説明する練習にもなった。

多くの参加者は低所得の移民で、自宅にパソコンがない。これだけインターネットに情報が溢れていても、気軽に情報を手に入れることはできない。それだけに、このパソコン教室で、出身国の地図や写真を見たり、電子メールを送ったりする作業を楽しんでくれたようだ。

この日は、そうした作業の復習として、①コリアタウンから、サンディエゴ市のバルボア公園に行く方法をグーグルで調べる、②バルボア公園内の室内植物園の写真をグーグルで探す、③出身国の新聞社のホームページを見つけて最新ニュースを読む、という三つの作業をした。

それぞれ作業のスピードは違うものの、うまく使いこなしていた。


「Hoy es la última clase(今日が最後のクラスか)」

メキシコ人のおじさんが声をかけてくれる。このおじさんはいちばん出席率が高かった。
「Sí(そうなんですよ)」と答えると、「Entonces, ya no vengo (じゃあ、僕も来なくなるなあ)」と言う。

おじさんの一言は、この移民支援団体におけるパソコン教室の機能を分かりやすく示している。
この団体にとって、パソコン教室そのものは、それほど重要な活動ではない。
最も重要な活動は、勤め先で賃金未払いなどの被害にあった移民労働者の権利を守ることだ。
具体的には、移民労働者の相談を受けた後、カリフォルニア州の労働基準監督署に被害を訴え、雇用者が罰金を支払うまで、移民労働者を支援する。

移民労働者がこの団体を知らなかったら、泣き寝入りすることもあるだろう。
しかし、普段から本人や友人が、この団体のパソコン教室などに参加していれば、何か問題が起きた際、この団体に安心して早い段階で相談することができる。
パソコン教室は、労働運動を展開する団体と移民労働者を結びつける接点の一つとして機能しているわけだ。

この団体は、英語教室と工作教室などのサービスも提供している。これらの教室も、移民の生活を支えると同時に、移民労働者と団体の接点として重要な役割を担っている。また、これらの教室の参加者が、この団体が計画したデモ行進などに参加することも珍しくない。

労働運動と地域支援は、切り離せない関係にある。


午前11時半、この日の参加者が帰っていく。最後に、中国出身のおじさんが残っていた。
おじさんは、手はないけど腕を器用に使って、教室の窓を開けたり、机を並べたりして、いつも手伝ってくれた。中国の朝鮮族についても、ときどき教えてくれた。

전화번호 주세요(電話番号ください)」と言うので、新聞紙の切れ端に僕の電話番号を書いて手渡した。肩を組むように、腕で僕の背中をさすってから、「バイバーイ」と言って帰っていった。

来年の夏も、また機会があれば、ぜひこのパソコン教室を担当したい。

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