2014年5月21日水曜日

マイノリティの権利どう守る、投票権法とブラウン裁判

アメリカ大学院留学の2年目が無事に終わった。この一年は博士課程の授業にくわえ、TA授業を経験し、アメリカの学部生と触れ合う貴重な機会を得た。先週末は卒業式があり、僕のTA授業を受講した何人かも卒業したようだ。

ロサンゼルス・タイムズをぱらぱら読んでいると、卒業式関連の記事を見つけた。記事はエリック・ホルダー司法長官が17日にメリーランド州の大学卒業式で行った基調講演の内容を取り上げている。彼はオバマ政権下で誕生したアフリカ系初の司法長官だ。

ホルダー長官は、約850人の卒業生を前に、マイノリティの権利を侵害するような社会の仕組みと闘っていくことの重要性について語り、同じような罪を犯しても白人よりマイノリティに対してより重い刑が言い渡される傾向が強いことやマイノリティの投票を阻むような法律があることなどを取り上げて批判した。

アメリカでは先月、アメリカのプロバスケットボールリーグ(NBA)のロサンゼルス・クリッパーズの経営者ドナルド・スターリング氏(80)が親しい女性の友人(31)に、アフリカ系の友人と付き合わないように、と伝えたことが明るみになり、人種主義的発言であるとして大きく報道された。

NBA本部が同氏をNBAから永久追放することを決めるとともに、250万ドル(約2億5千万円)の罰金を科した。アフリカ系の選手が多く活躍しているNBAの経営者の一人が、アフリカ系を対象にした人種主義的発言をしたことも大きな話題を呼ぶ原因となった。

ホルダー長官は、スターリング氏の発言などを念頭に、一時的なニュースに世間が騒いでいる間に「私たちは水面下で進むより深刻な現実について理解する機会を失うだろう」とし、そうした現実は「貧困と犯罪、投獄(の悪循環を生み出し)、個人を苦境に陥れ、地域社会を破壊し、マイノリティの住む地域を差別することにつながる」と述べたという。

2015年は市民権運動の成果の一つである投票権法(1965年)が制定されてから、ちょうど50周年。投票権法は投票における差別を禁じ、マイノリティの参政権行使を積極的に推し進めることを可能にした。
ところが、近年、不正投票を防ぐという理由で、投票の際に写真付き身分証明書を求める州が増える傾向にあり、この新たな条件が、もともと投票率の低いマイノリティの投票をさらに阻むのではないかと懸念する声も広がっているという。


裁判や法律だけでなく、教育においても、マイノリティが直面する課題は多い。

2014年は、教育機関における人種分離(racial segregation)を違憲としたブラウン対教育委員会裁判(1954年)から、ちょうど60周年。しかし、今日でもヨーロッパ系(白人)とそれ以外のマイノリティの若者がそれぞれ別の学校に通うという状況は珍しくない。カリフォルニア大学ロサンゼルス校市民権プロジェクトは、特に1980年代以降、マイノリティかつ低所得家庭の若者が集中する学校が増えていると指摘し、そうした学校を人種と階級の両面で分離された「二重分離(doubly segregated)」と表現している。

アフリカ系とラティーノの多くが「二重分離」学校に通う一方、ヨーロッパ系とアジア系の多くがより豊かな地域の学校に通う傾向が強く、両者の間の教育格差につながっている。同プロジェクトは「(学校における人種統合という)ブラウン裁判の目的が忘れられ、学校間の二極化と不平等が広がっている」と指摘している。

僕がTA授業で担当した学部生も9割近くがヨーロッパ系とアジア系で、アフリカ系とラティーノは少数だった。それぞれの州や地域によって、学部生の人種エスニシティの割合は大きく異なるものの、カリフォルニア大学システム全10校の2010年のデータでは、ヨーロッパ系が33%、アジア/太平洋諸島系(フィリピン系を除く)が30%、ラティーノは15%、アフリカ系はわずか3%だ。
公立高校の「二重分離」状態は、彼らの大学進学率にも影響を与えていると考えられる。

マイノリティと教育格差の問題。アメリカだけの問題ではない。日本で暮らす外国にルーツを持つ若者に対する学習支援、進路支援はまだまだ足りない。


毎学期、大学院の作業をすべて終えると、自宅アパート近くのタイ料理店に行くことにしている。そこでパッキーマオという平麺料理を食べる。今回はタイ風唐揚げも注文した。唐揚げの一部が十分に調理されていなかったので、揚げ直してもらったらやや増量されて返って来た。ラッキーだった。



・写真付き身分証明書についてのウィキペディアの記事は、こちら
・「二重分離」学校などについてのPBSの記事は、こちら
・カリフォルニア大学システムの人種エスニシティの割合については、こちら

0 件のコメント:

コメントを投稿