2013年3月23日土曜日

メキシコ人の友人、8年ぶりの再会

2004年から10ケ月、カリフォルニア州の大学に学部生として交換留学した。
その大学付属の英語スクールには、多くの日本人学生も語学留学していたため、よく足を運んでいた。
日本人のほかには、韓国人や中国人の留学生も多かった。

そこでメキシコ人男性の留学生に出会った。
彼はメキシコの大学を卒業した後、英語スクールに留学していた。僕と同年代だった。
なんとなく互いの波長が合ったこともあって、すぐに仲良くなった。

クリスマスには、カリフォルニアに住む彼の親族のパーティに連れて行ってくれた。
ちょうどメキシコ人やアジア人移民のことを大学で学んでいたので、メキシコ人移民の家族のつながりを垣間見る良い機会になった。

僕が2005年に留学を終えて帰国した後、彼と連絡を取ることはほとんどなかったけど、留学時代の忘れられない友人の一人だった。

それから7年たった2012年春、とつぜん彼から電子メールを受け取った。
「どうしてるかなと思ってメールしました。いま『サバド・ヒガンテ(Sábado Gigante)』を見てて、ちょうど君のことを思い出したよ。まだこのメルアド使ってるかな。元気でいることを願っています」

「Sábado Gigante」とは、アメリカのスペイン語テレビ局が南北アメリカ大陸で放送しているバラエティー番組。その番組が好きだということを彼に話したことがあった。

メールを受け取ったのは、ちょうどアメリカ大学院留学を4ヶ月後に控えている時期だった。
「もしカリフォルニアに住んでいるなら、現地で会おう」と約束した。


2013年3月22日、ロサンゼルス郡北部の彼の自宅を妻とともに訪ね、8年ぶりに再会を果たした

この間の彼の歩みについて聞いた。

彼が英語スクールで10ケ月ほど学んだ後、カリフォルニア州内でフェンス建付会社やコンクリート会社に勤めた。けど、彼の夢はアメリカの大学で学ぶということだった。
その目標を胸に、厳しい仕事に耐えて、学費を貯金した。
一日20時間働く日も珍しくなく、ほとんど寝る暇もなかったが、お金を使う暇もなかったので、かなり貯金できたようだ。

そして、カリフォルニア州立大学の修士課程に入学し、電子工学を学ぶ。4年ほど前に卒業し、現在は大手企業で技術者として活躍している。
卒業したころに、メキシコ系アメリカ人の女性と結婚。閑静な住宅街に自宅を購入し、4ヶ月前には第一子となる女の赤ちゃんも生まれた。
また、現在はアメリカ市民権(国籍)も取得したという。

アメリカでは、努力を積めば移民であっても成功できる、といわれている。
それは、しばしば「アメリカン・ドリーム」という言葉で説明される。

彼の場合も、まさにそういったストーリーの一つといえる。
しかし、努力すれば誰でも成功できるわけではけしてなく、前提として、努力する能力や機会に恵まれていることも欠かせない要素だ。
彼と再会して実感したのは、そういったストーリーの背景にある努力が、ふつうの努力ではなく、並はずれた努力だということ。また、「いろいろと機会に恵まれた」と感謝する彼だからこそ、地道に努力を重ねて、アメリカで豊かな生活を手に入れることができたのかもしれない。

彼の奥さんも「アメリカで生まれ育った人と比べても、彼ほどの努力を積める人はほとんどいない」と話していた。
そんな彼女の父親も1970年代にアメリカに入国し、何もないところから、自動車部品会社の社長になるまで成功したメキシコ人移民だ。

そんな父親の姿と夫の姿が重なるところもあるのだろう。


この日は金曜日。メキシコ人移民の家庭では、週末には親族が集まって夕食をとることが珍しくない。
というわけで、彼の妻の姉、妹、母親、姪っ子2人に加え、2週間前に孫の顔を見にメキシコから来た彼の母親も集まり、にぎやかな夕食となった。

メキシコ移民の家庭の多くは、カトリック教徒だ。
月末に復活祭(イースター)を控えているため、それより前の40日間の金曜日は肉は食べないという。40日間ずっと肉を食べない人もいるらしい。
というわけで、夕食もエビなど魚介類の炒め物と、コンソメ風味の炊き込みご飯だった。
飲み物は、タマリンドのジュース。くわえて、彼の母親が作ったサボテンの炒め物も出してくれた。

手前の炊き込みご飯は、「ソパ(sopa)」とメキシコでは呼ばれている。
全員に料理が運ばれると、彼が「じゃあ、お祈りをしましょう」と言った。
こうして食事が食べられること、また、家族や仲間と集えることについて、彼が神への感謝の言葉を述べる。
まわりの人たちは目をつぶり、彼の言葉を聞きながら、ともに祈る。
最後は一緒に「アーメン」と言って、胸元で十字架を切ってから、食事を始める。

こういう時間は、心地よい。

来週末には、ロサンゼルス中心部の教会で、彼らの赤ちゃんの洗礼儀式があるということで、招待してくれた。
カトリック教徒にとって、とても大切な日。両親はできるだけ多くの人と祝福を分かち合いたいと願う。

8年前は互いに20代前半の男子学生として知り合った彼と僕。二人とも結婚して4年目だ。
これからは家族も含めて、交流を深めていけたらと思う。

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