近づいてみると、この大学の日系人学生クラブが開いた日本文化イベントだった。
訪れた学生らが巻きずしを食べたり、折り紙や習字を体験したりして楽しんでいた。
「週末も別の催しがありますよ」と、女子学生スタッフが声をかけてきた。
「土曜日はちょっと参加できません」というと、「じゃあ、とりあえずこれをあげますね」と白地に赤い文字で「Japan」と書かれたゴム製リストバンドをくれた。
◇
大学では歴史学科の同級生に日系アメリカ人3世の友だちがいる。
ただ、日本から来た留学生にキャンパスで出会うことはほとんどない。
「なんか日本から来た学生っぽいな」という学生を見ることもほとんどない。
この大学で経営学を学ぶ日本人留学生は、中国人や韓国人に比べて、経営学修士課程(MBA)における日本人の存在感はぜんぜんないと話す。
また、別の大学で経営学を学ぶタイ人留学生も「アメリカに来て日本人留学生が少ないのでちょっと意外だった」と言っていた。
アメリカで学ぶ日本人留学生は1997年秋~1998年夏、4万7千人で世界最多だった。
しかし、2011年秋~2012年夏は1万9900人まで減った。
昨年11月、朝日新聞デジタルのニュース見出しは「米大学への日本人留学生2万人割れ、中国人は19万人に」。
現在はアメリカで学ぶ留学生としては中国人(19万4千人)が世界最多だ。それにインド(10万人)、韓国(7万2300人)、サウジアラビア(3万4100人)、カナダ(2万6800人)、台湾(2万3200人)、日本と続く。
アメリカで学ぶ日本人学生が減っている理由は、いろいろ。ネットで検索すれば、さまざまな調査結果を見つけることができる。僕の学部交換留学と大学院正規留学の経験などからいうと、〇長期間の就活、〇高い留学費用、〇大学などの不十分な留学支援制度、〇少子化、〇アメリカの相対的なイメージ低下などが、ぱっと思い浮かぶ。
文部科学省の2012年のまとめによると、日本人留学生の総数も2004~2009年は下り坂らしい。アメリカで学ぶ留学生は2009年以降も減少し続けているので、おそらく留学生総数もその傾向にあるだろう。
一方、アメリカ国際教育機関(Institute of International Education、IIE)によると、アメリカで学ぶ留学生数は、基本的には増え続けており、2011年秋~2012年夏は合計76万4500人に及ぶ。
ところで、逆に外国で学ぶアメリカ人留学生は何人くらいいるんだろか。
2010年秋~2011年夏は、前年同期比1.3%増の27万4千人だったという。
人気の留学先は1位がイギリス(3万3200人)。イタリア(3万人)、スペイン(2万6千人)、フランス(1万7千人)とヨーロッパ諸国が続いた後、中国(1万5千人)が登場する。
こうしてアメリカ人留学生の行先を見ると、アメリカ人が一般的に描く世界観の一部が透けて見えなくもない。アメリカと中国は政治的には一定の緊張感があるが、文化的な人的交流はかなり進んでいることもわかった。
ちなみに、日本へのアメリカ人留学生は、おそらく東日本大震災の影響もあってか、前年同期比33%減の4100人で、14位だった。興味深いことに、僕が高校時代に留学したコスタリカは、日本では知名度がかなり低いものの、そこで学ぶアメリカ人留学生は7200人で8位だ。おそらく、観光気分でスペイン語を学ぶ地域として人気があるんだろう。
まだ、IIE調査の最新版は出ていないが、東日本大震災後のアメリカ人留学生数はどの程度、回復したのかも気になるところだ。
留学とは個人レベルでは一方通行でも意味はあるが、国レベルでは互いに学生を送りあうほうが、望ましい文化外交のように思う。そういう意味では、日本から海外に出ていく留学生だけでなく、日本にやってくる留学生や彼らをサポートする仕組みについても注目していきたい。
※ちなみに、アメリカ人留学生の行先は、中国の後に、オーストラリア、ドイツ、コスタリカ、アイルランド、アルゼンチン、インド、南アフリカ、メキシコ、日本、ブラジル、イスラエル、ギリシャ・・・と続く。
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