2013年2月2日土曜日

市民権への道筋、非合法移民問題、アメリカ移民制度改革

オバマ大統領が1月29日、移民制度改革への姿勢を明らかにした。

現在、アメリカには1100万人以上の非合法移民が暮らしている。非合法移民問題に対応するための移民制度改革の実施は、オバマ大統領の主要政策の一つだ。

オバマ大統領の改革案は主に、①国境警備の強化、②非合法移民労働者の雇用を防ぐ取組、③非合法移民に対する市民権付与(合法化)、④外国出身の企業家、大学院生のアメリカ国内における起業や就職の支援、の4点だ。

これは1986年、レーガン大統領時代に制定された移民改革管理法(Immigration Reform and Control Act)と基本的に似た内容となっている。当時も増加する非合法移民対策として、同法が制定された。

今回の改革案と1986年法で異なる点の一つは、③の項目において、幼いころに親に連れられてアメリカに不法入国した若者たちに対して、軍隊に入隊、または大学に入学した場合に、合法化手続きを迅速に行うという点だ。これはオバマ大統領が一期目の2010年、通称「ドリーム法」の法案として提出したものの、共和党の反対で廃案となっていた。

ということは、また今回も廃案になるんじゃないか、と思う人もいるだろう。もちろん、その可能性はなくはないとしても、今回はちょっと状況がちがう。


昨年11月の大統領選では、失業率8%という現職にとっては厳しい状況にあったにもかかわらず、マイノリティ集団、女性、また若者を中心に幅広い支持を得たオバマ大統領が大差をつけて再選を果たした(白人男性の4割もオバマ支持)。

選挙戦において、オバマ大統領は非合法移民の若者を合法化する必要性をくりかえし訴えた。それも含めて再選を果たしただけに、オバマ大統領の移民制度改革に対して、共和党も簡単に無視できない状況になってきたわけだ。

くわえて、国勢調査局は2042年には白人の人口比率が過半数を切ると予測。多くの移民を抱えるマイノリティ集団を無視して、今後の選挙を有利に進めることはなかなか難しくなってきていることも、共和党の姿勢の変化に大きな影響を及ぼしている。

それもあってか、今回のオバマ大統領のスピーチ前日に、上院の超党派グループが、大統領の政策とほぼ同様の政策案を発表した。共和党のジョン・マケイン上院議員もメンバーの一人だ。ただ、民主党と共和党が上院ほど協力的でない下院では、今後、どういう議論がなされるのか。
オバマ大統領が「改革の詳細については非常に厳しい議論となるだろう」というように、まだ楽観はできない状況といえるだろう。


しかし、今回の上院グループとオバマ大統領の発表は大きな一歩でもある。
ロサンゼルスを中心に活動する移民支援団体「CHIRLA」の担当者は、地元テレビ局のニュース番組に出演し、「市民権取得への道筋(a pathway to citizenship)」という言葉が大統領の口から聞いたのは、この20数年間で初めてだ、と期待を込めていた。

・昨年11月の大統領選挙の関連記事は、こちら

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