2013年3月2日土曜日

テレビ番組と人種・エスニシティ

アメリカでは、できるだけテレビを見るようにしている。

もともとテレビが好きというのもあるけど、英語のリスニングの練習にもいい。
テレビ画面を字幕設定にしているので、聞き取れない言葉があっても、すぐに画面の下の方を見れば、なんと言ったのか分かる。
新しく知った言葉や表現であれば、メモしておく。
毎日やれば、それなりに英語の勉強になる。

朝は地元テレビ局のニュース番組を見る。
地元密着型なので、視聴率も高い。
朝のニュース番組のメインキャスターは、日系アメリカ人の男性とカナダ人の女性だ。
男性キャスターは、東日本大震災の際は、現地に取材に行ったらしい。
女性キャスターは、日本の人がイメージする黒人とはちがうけど、全国黒人ジャーナリスト協会のメンバーだ。

朝のニュースに限っていえば、天気予報担当と芸能担当はそれぞれ白人男性で、道路交通情報(ロサンゼルスではとても大事)は中国系女性、レポーターはラティーナ(中南米系)女性らいろいろな人たちが担当している。
テレビニュースに登場する人たちの人種・エスニシティはとても多様だ。

こうしたキャスターやレポーターの多様性は、リベラルな印象を与えるためか、アメリカの多くの主要テレビメディアで共通した特徴となっている。

このテレビ局のウェブサイトをのぞいてみた。
「Equal Opportunity Employer (機会の平等を重視して雇用します)」と題して、「私たちは人種、宗教、性別、出身地、年齢や障害の有無によって差別することなく、すべての職種に対して、最適な人材を雇用します」と書いてある。

さきほどの女性キャスターは、2005年に南カリフォルニア黒人ジャーナリスト協会でスピーチした際、ロサンゼルス生活を楽しみつつも、故郷への思いから、カナダ国籍を放棄してアメリカ国籍を取得するつもりはないと答えている。
彼女は、カナダの家庭で養子として育てられた。
カナダ国籍にこだわるのは、カナダに住む育ての親に対する感謝からなのかもしれない。


最近はときどき「Glee」という人気ドラマも見る。高校の合唱部を舞台にしたコメディドラマだ。
2009年に放送開始で、現在はシーズン4が放送中だ。
日本でも2010年から放送され、知っている人は多い。
特徴的なのは、ミュージカルのように、演技中の出演者が突然、歌ったり踊ったりするところ。
それに、歌も踊りもうますぎるため、なかなか飽きない。

このドラマの登場人物は、ニュース番組以上に多様だ。
白人、アフリカ系、アジア系といった人種・エスニシティの多様性だけでない。ゲイやレズビアンといった同性愛者の若者も中心的な役割を果たしているし、身体障害者やダウン症の若者も頻繁に登場して、一緒に歌ったり踊ったりしている。

このドラマは人気脚本家ライアン・マーフィーが中心となって制作している。
マーフィー自身が同性愛者であることも、視聴者を引き付ける「Glee」の脚本につながっているようだ。
雑誌「Vogue」のインタビュー記事で、マーフィーは高校時代の恋愛経験について語っている。当初は取り乱した両親も今ではよく理解してくれているという。
「マーフィーの経験は『Glee』のエピソードの一つのようだ」(同誌)。


ニュース番組にしても、ドラマ番組にしても、テレビの影響は小さくない。
社会的マイノリティに対する偏ったイメージを生み出すテレビ番組がある一方で、多様な個性を認め合う社会のイメージを生み出しているテレビ番組もある。
そんなことに注目して、アメリカのテレビ番組を見るのも興味深い。

・Vogueの記事は、こちら


0 件のコメント:

コメントを投稿