2015年7月9日木曜日

ナイアガラの滝とインド人観光客、「シブキハ雨ノ如ク」

ニューヨークからシカゴへアムトラック(Amtrack)の列車で向かう。
その途中、一泊してナイアガラの滝を見に行った。たまたま独立記念日の夜に立ち寄ったため、滝で打ち上げられた花火を見ることができた。

アメリカ独立記念日に合わせてナイアガラの滝で開催された花火

ナイアガラの滝はアメリカとカナダの国境と重なり、両国の領土から楽しむことができる。アメリカからカナダに橋を渡って入国し、数時間滞在する観光客も多い。アメリカを出国するゲートを通ると、すぐ右手にアメリカに入国するゲートがあり、入国ゲートには人が並んでいるので、ぼけっとしていると出国した直後に入国のための列に並んでしまいかねない。

ぼけっとしていた僕と妻はその列に並んでしまった。移民局職員から「どっから来たの。カナダで観光してきたんでしょ」と言われたものの、これからカナダで観光するところだったので、意味が分からず、そわそわしていたら「大目に見ます」と通過を許された。施設を出ると、もと来たアメリカ側。他の観光客に間違いを指摘してもらい、ああそうか、ということで、改めてアメリカを出国した。

カナダ側から見たナイアガラの滝(カナダ滝)の様子
アメリカ側から見たナイアガラの滝(アメリカ滝)の様子

ナイアガラの滝は国内外から集まった多くの観光客でにぎわっていた。不思議なくらい南アジア系の家族連れ観光客が多かった。ここはインドかと思うくらい多い。カナダ側の都市トロントには南アジア系移民のコミュニティがあり、そこから来た人もいるんだろうけど、アメリカ側からも多くの南アジア系の人々が足を運んでいる。なんでなんだろうか。

南アジア系の人々に声をかけて聞けばよかったものの、その努力を怠ったので、まったく根拠なくいろいろ考えてみた。インドの人々の間でナイアガラの滝はアメリカ観光の代名詞である可能性はあるけど、それ以上にナイアガラの滝の景色が彼らを引きつける魅力があるんじゃないだろうか。

滝となって落ちていくナイアガラ川の水は感動的に清んでいる。その流れを感じながら、多くのインド人家族が滝周辺の芝生のうえでくつろいでいる。インドの人々が抱く宗教的イメージにナイアガラの滝の姿が重なるんじゃないか。

ネットで「ナイアガラの滝、インド人」と英語で検索すると、僕と同じ疑問を持った人々による質疑応答ページがたくさん出てきた。一時は観光客が減ったナイアガラの滝はインド人が多く来ることで活気を取り戻しているという。2011年にナイアガラの滝を訪ねたインド人のコメントを紹介したサイトがあった。

ナイアガラでインド料理店を営む男性は「(ナイアガラに来ると)ほとんどインドにいるように感じる。これだけインド人が多いので」。観光客の男性は「インド人がアメリカについて話すとき、出てくるのはフロリダ州のオーランドかナイアガラだけですよ」。最後に登場した女性は「川の流れがいいですね。水の音もゆったりで素晴らしいです。その水に触れたくなります。人間はこんなものを作ることはできません」(一部省略)と話していた。

カナダ側から滝の景色を楽しんだ後、アメリカ側に再入国した。カナダを出る際に出国通行料として一人50セント支払う。説明の看板は、英語の他に、フランス語、ドイツ語、そして日本語で書かれていた。今回はほとんど日本人観光客は見なかったけど、きっとかつてはより多くの日本人がナイアガラの滝に足を運んだんだろう。なかばインドに行ったような気分になって、ナイアガラの滝を後にした。

カナダを出国する際には一人50セントの出国通行料を支払う。


ところで、ナイアガラの滝に行く一週間ほど前、1920年代と1930年代にカリフォルニア州内の日本語学校で使われていた日本語の教科書を見つけた。その中にナイアガラの滝について説明する文章があった。
僕らが見た景色がイラストとして描かれ、「梯子ヲ降リレバ瀧ノ音ハ耳ニ聾シ、シブキハ雨ノ如クニ降ル」と説明が添えられている。現在は「エレベーターで降りれば」だけど、およそ100年前の人々と同じ経験を楽しむことができた。

1920年代、1930年代にカリフォルニア州内で使用された日本語の教科書。ナイアガラの滝が紹介されている。

カナダ(左側)とアメリカ(右側)をレインボーブリッジが結ぶ。右手奥の青い建物の中のエレベーターで川辺まで降りると、観光船に乗って間近で滝を見ることができる。

・ナイアガラの滝に来たインド人のコメントについては、こちら

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