2015年3月6日金曜日

韓国料理とメキシコ料理でプルコギタコス、移民社会の食文化

このブログではエスニック・コミュニティや近所の料理店に足を運んだ際に食べたエスニック料理を多く紹介している。

当初はエスニック料理を紹介したほうが旅行記的な要素も増し、記事が読みやすくなるのではないかと思っていたけど、今では調和のとれた移民社会を形作るうえでエスニック料理は重要な役割を果たしているんじゃないかと思うようになった。

異なる文化圏の人たちについて理解を深めるためには、彼らに対して何かしらの共感を持つことが大切だ。彼らが美味しいと思っているものを食べて自分も美味しいと思えれば一つの共感だし、美味しいと思えなくても理解は深まる。

相手の言葉を覚えるのは難しいけど、相手が美味しいと思っているものを食べるのは簡単だから、異文化理解の入り口としてエスニック料理は大切だ。ただ、「エスニック料理」という言葉も相対的なものだから、アメリカ人にとって寿司、僕にとってハンバーガーはそれぞれエスニック料理といえる。

ロサンゼルスで暮らしていて興味深いのは、異なるエスニック料理が合体して、新しい料理に発展していく状況が観察できることだ。

自宅から徒歩5分の交差点の角に小さなアメリカ風軽食店がある。
この店は韓国系移民の女性が店を切り盛りしている。
この間、そこに昼ご飯を食べに行った。平日の午後1時、狭い店内は15人ほどの客で満席だった。

メニューはハンバーガーやサンドイッチ、フライドチキンといった定番から、チキンテリヤキランチやスシロールなどのアメリカ風和食もある。

僕が注文したのは、プルコギタコス。韓国料理とメキシコ料理のフュージョン料理だ。2008年、ロサンゼルスでフードトラック「Kogi」を経営するシェフの韓国系アメリカ人、ロイ・チョイがメキシコ料理のタコスの生地に韓国料理のプルコギを入れて売り出す。ツイッターで宣伝した効果もあって、一気に評判が広まり、今では「Kogi」以外の多くの店で取り扱う人気商品になった。

というわけで、僕のアパートの近所でも食べることができる。実際に食べてみると、プルコギがタコスの生地やシラントロ(香菜)と違和感なくマッチしており、予想通りに美味しかった。

念願のプルコギタコス。チリソースがけっこう辛かった。

妻はチャイニーズチキンサラダを注文。このサラダも西洋的なサラダに中国風のドレッシングを混ぜたフュージョン料理でカリフォルニアで生まれたといわれている。これがまたうまい。先月、授業である先生の自宅に行った際、昼ご飯としてご馳走になったのがチャイニーズチキンサラダだった。昼食にサラダだけという発想に文化がちがうなあと感じたけど、鶏肉も入って味付けも濃く、それ以降、お気に入りのサラダになった。

チャイニーズチキンサラダはごま油の香りが食欲をそそる。

歴史を振り返ると、日本の肉じゃがを含め、世界の多くの料理がある程度はフュージョン料理といえるんじゃないだろうか。そう考えると、プルコギタコスやチャイニーズチキンサラダはフュージョン料理というより、むしろ移民の交差点であるカリフォルニアで独自に発展したカリフォルニア料理と考えていいと思う。


ところで、今月5日はカップヌードルを開発した安藤百福(1910~2007)の誕生日で、グーグルのトップ画像が百福さんのイラストだった。1910年当時は日本の領土だった台湾で生まれた百福さんが1971年に発売したカップヌードルは現在、アメリカを含め世界各地で愛されている。カップヌードルをすすりつつ、戦前の帝国主義と戦後の消費社会の歴史がそこを生きてきた人の人生を通して結びつく。

アメリカで販売されているカップヌードルは日本のものと別物。一つ40セントくらいで、かなり味が薄い。値段が安いので、99セントショップ(日本の百円均一ショップ)で購入する人も多い。

アメリカ日清のウェブサイトでは、「Beef」や「Chicken」に「Chicken Vegetable」や「Creamy Chicken」など20種類も紹介されている。さらにラティーノ消費者を狙ったような「Salsa Picante Chicken」(チリソースチキン味)もある。これもプルコギタコスと同じように、アジアで生まれた麺商品がカリフォルニアを含むアメリカ南西部の食文化と混ざり合った結果といえるだろう。

・Kogiのウェブサイトは、こちら

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