11月21日午後6時、ラティーノ系大手テレビ局「Univision(ウニビシオン)」のニュース番組は男性キャスターのこの言葉で始まった。
その1時間前、オバマ大統領が非合法移民約500万人の強制送還を一時的に停止すると発表した。大統領は「(アメリカは)今もこれからも移民の国です。私たちもかつてどこからかアメリカにやってきた人々(の子孫)なんです」と訴えた。
移民制度改革案を発表するオバマ大統領 |
アメリカでは、多くの非合法移民が低賃金労働者としてアメリカ経済を支える一方、非合法移民の親の強制送還によって親子が離れ離れになる状況が続いてきた。
このような状況を改善しようと、アメリカ政府はアメリカ生まれの子どもの親で、5年以上前から滞在している人に対して労働許可証を発給するとともに3年間の滞在を許すことを決めた。その数は400万人ほどに達するという。
さらに、子どものころに親に連れられて入国した非合法移民の若者たちの強制送還を停止する既存の事業も延長する。今回の事業延長で新たに30万人の若者が安心して国内で暮らせるようになるという。
恒久的な移民改革法案を議会で成立させる目途が立たないため、今回の強制送還の停止は大統領の権限で実行される。
非合法移民の多くはメキシコや中央アメリカ出身のラティーノたち。彼らはオバマ大統領による移民制度改革に強い期待を寄せていただけに、一時的な措置とはいえ、今回の判断を歓迎している。
そのテレビ番組では、移民支援団体の代表者、議員、弁護士、アメリカ生まれの子どもと暮らす非合法移民の女性のインタビューなどを放送した。
ロサンゼルスの移民支援団体でインタビューするリポーター |
テレビ局のウェブサイトでも非合法移民の反応を紹介。アメリカに来て15年になる女性は「とてもうれしいです。外を歩いていてもいつも捕まるんじゃないか、強制送還されるんじゃないかと怖かったですし、そうなったら子どもと離れ離れになるでしょ」と今回の発表にほっとする一方、こういう機会を得ずに強制送還されてしまった人たちのことが気の毒だと話していた。
また同局の看板ジャーナリスト、ホルヘ・ラモスも今回の発表を、非合法移民約300万人を合法化した1986年移民改革管理法以来の大規模な改革と評価。ただ、1986年移民法は合法化後に、新たな合法化を期待して非合法移民が増えたという批判もなされている。
それを意識してか、ラモスは「メキシコやベネズエラで番組を見ているみなさん、あなたたちは対象じゃありませんよ」と強調していたことが印象的だった。こういう語りかけはアメリカだけでなく中南米諸国で広く放送されているラティーノ系テレビ局ならではだ。
保守派の批判を抑えるための意識的な発言だったのかもしれない。
◇
非合法移民のニュースが終わると、メキシコ国内のニュースに移った。
ゲレロ州で43人の大学生が行方不明になり、一部の学生の遺体が見つかっている事件に対する抗議運動のニュースだった。
メキシコ・シティーで行われたデモの様子 |
オバマ大統領の発表に涙するアメリカ国内のラティーノ、メキシコ国内で行方不明の学生、そして、華やかなラテンアメリカ出身の芸能人。テレビが切り取ってつなぎ合わせた事実は世界の一部でしかないけど、今日の放送の流れは、アメリカとラテンアメリカの間の不平等な関係をコマーシャルを挟みつつ、まざまざと見せつけるものだった。
・参照したロサンゼルス・タイムズの記事は、こちら。
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