ヴェニス通り沿いの「Grand View Market」。1920年代に建てられた建物を活用し、広々とした店内に食料品を並べた棚や精肉コーナー、カウンターバーなどが入っている。
気に入っている理由は、店内で買ったサンドイッチや飲み物などを楽しめる飲食スペース。大手チェーンのコーヒーショップのように、たくさん客がいたり、空調が寒すぎたりしないので、長時間ゆっくり勉強ができる。
ただ、店の大きさに比べて、客が少ないので、もう少し客がいないと、そのうちテナントの賃料が支払えず、閉店してしまうんじゃないかと思うので、もっといろんな人に来てほしいと思う。
アルコールやソフトドリンクの種類も豊富。ザクロ入りジンジャーエールなど、普通のスーパーマーケットでは買えない飲み物も2ドル程度で買えるので楽しい。
この日は、ソビエト連邦をモチーフにしたレモネード「レーニンネード」を飲んだ。瓶の裏側には「我々の五
「レーニンネード」 |
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「レーニンネード」を飲みつつ、そこで勉強していると、夕方から一組の男女が飲食スペースのソファを移動させて空いた空間にマイクスタンドを置き、何かのステージを準備し始めた。徐々に飲食スペースに人が集まり始めると、ステージを準備していた男性が「くじで順番を決めます。名前を書いて言ってください」と呼びかけた。
僕はなんのことか分からないので、もちろん傍観していたんだけど、なんだか男性は僕にもくじを引かせようと声をかけてきた。僕は「何か分からないのでけっこうです」と答えた。
ステージ周辺には仕事などを終えて集まってきた30人くらいの若者たち。大人しそうな感じの人たちが多い。何をするんだろうと思うと、くじで決まった順番で、スタンドアップコメディを始めた。
スタンドアップコメディとは、1人の芸人が観衆に直接話しかけるようにジョークを言って笑いを誘う、アメリカで一般的なお笑いの形式だ。スタンドアップで成功して有名になる芸能人も少なくない。
そういうわけで、思いがけず、普段はガラガラの食料品店で、生のスタンドアップを見る機会を得た。とはいえ、アマチュアの人々が集まってネタを試す場だから、なかなか大きな笑いは生まれない。僕には聞き取れない部分も多かったけど、アメリカ人の反応もいまいちだった。
全体として、人種(エスニック)ネタとシモネタの二つが目立った。人種ネタが多いのは移民の国ならでは。最初にステージに立った白人男性は「白人は大量虐殺や奴隷制、経済危機などを生み出して最悪だ。きっと恐竜を全滅させたのも白人だろう」と言って、完全にスベっていた。
しばらくして出てきた白人女性は「デートを絶対に成功させる方法が一つあります」と言ってためた後、「とにかくできるだけエロい感じにしておけば間違いありません」と加え、その言い回しからそこそこ受けていた。彼らの他にもアフリカ系やアジア系の若者も参加していた。
午後8時を過ぎたので、席を立つと、司会者の男性が「アリガトウ。サヨナラー」と声をかけてくれた。
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毎週土曜日の夜、大手テレビ局NBCでお笑い番組『Saturday Night Live』を見ている。出演者を変えながら1975年から続く長寿番組で、ここから巣立った多くの芸人が、その後、トークショーやドラマ、映画などで活躍している。白人の視点を中心としたお笑いだけど、よくもわるくも、アメリカのお笑い文化を理解するには適した番組の一つといえる。
もちろん英語が聞き取れないことも多いけど、聞き取れてネタの社会的・文化的背景も分かる限りでは、外国人の僕でもけっこう笑える。食料品店の即席ステージでネタを披露した若者たちの一部も大きな舞台を夢見ているんだろう。
・店のリンクは、こちら。
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