2013年2月25日月曜日

アメリカの日本人留学生、アメリカ人留学生はどこへ

この間、大学キャンパス中央の広場で、大きな日章旗を掲げたイベントブースを見つけた。
近づいてみると、この大学の日系人学生クラブが開いた日本文化イベントだった。
訪れた学生らが巻きずしを食べたり、折り紙や習字を体験したりして楽しんでいた。

「週末も別の催しがありますよ」と、女子学生スタッフが声をかけてきた。
「土曜日はちょっと参加できません」というと、「じゃあ、とりあえずこれをあげますね」と白地に赤い文字で「Japan」と書かれたゴム製リストバンドをくれた。


大学では歴史学科の同級生に日系アメリカ人3世の友だちがいる。
ただ、日本から来た留学生にキャンパスで出会うことはほとんどない。
「なんか日本から来た学生っぽいな」という学生を見ることもほとんどない。

この大学で経営学を学ぶ日本人留学生は、中国人や韓国人に比べて、経営学修士課程(MBA)における日本人の存在感はぜんぜんないと話す。
また、別の大学で経営学を学ぶタイ人留学生も「アメリカに来て日本人留学生が少ないのでちょっと意外だった」と言っていた。

アメリカで学ぶ日本人留学生は1997年秋~1998年夏、4万7千人で世界最多だった。
しかし、2011年秋~2012年夏は1万9900人まで減った。
昨年11月、朝日新聞デジタルのニュース見出しは「米大学への日本人留学生2万人割れ、中国人は19万人に」。
現在はアメリカで学ぶ留学生としては中国人(19万4千人)が世界最多だ。それにインド(10万人)、韓国(7万2300人)、サウジアラビア(3万4100人)、カナダ(2万6800人)、台湾(2万3200人)、日本と続く。

アメリカで学ぶ日本人学生が減っている理由は、いろいろ。ネットで検索すれば、さまざまな調査結果を見つけることができる。僕の学部交換留学と大学院正規留学の経験などからいうと、〇長期間の就活、〇高い留学費用、〇大学などの不十分な留学支援制度、〇少子化、〇アメリカの相対的なイメージ低下などが、ぱっと思い浮かぶ。

文部科学省の2012年のまとめによると、日本人留学生の総数も2004~2009年は下り坂らしい。アメリカで学ぶ留学生は2009年以降も減少し続けているので、おそらく留学生総数もその傾向にあるだろう。


一方、アメリカ国際教育機関(Institute of International Education、IIE)によると、アメリカで学ぶ留学生数は、基本的には増え続けており、2011年秋~2012年夏は合計76万4500人に及ぶ。

ところで、逆に外国で学ぶアメリカ人留学生は何人くらいいるんだろか。
2010年秋~2011年夏は、前年同期比1.3%増の27万4千人だったという。
人気の留学先は1位がイギリス(3万3200人)。イタリア(3万人)、スペイン(2万6千人)、フランス(1万7千人)とヨーロッパ諸国が続いた後、中国(1万5千人)が登場する。

こうしてアメリカ人留学生の行先を見ると、アメリカ人が一般的に描く世界観の一部が透けて見えなくもない。アメリカと中国は政治的には一定の緊張感があるが、文化的な人的交流はかなり進んでいることもわかった。

ちなみに、日本へのアメリカ人留学生は、おそらく東日本大震災の影響もあってか、前年同期比33%減の4100人で、14位だった。興味深いことに、僕が高校時代に留学したコスタリカは、日本では知名度がかなり低いものの、そこで学ぶアメリカ人留学生は7200人で8位だ。おそらく、観光気分でスペイン語を学ぶ地域として人気があるんだろう。

まだ、IIE調査の最新版は出ていないが、東日本大震災後のアメリカ人留学生数はどの程度、回復したのかも気になるところだ。

留学とは個人レベルでは一方通行でも意味はあるが、国レベルでは互いに学生を送りあうほうが、望ましい文化外交のように思う。そういう意味では、日本から海外に出ていく留学生だけでなく、日本にやってくる留学生や彼らをサポートする仕組みについても注目していきたい。

※ちなみに、アメリカ人留学生の行先は、中国の後に、オーストラリア、ドイツ、コスタリカ、アイルランド、アルゼンチン、インド、南アフリカ、メキシコ、日本、ブラジル、イスラエル、ギリシャ・・・と続く。

2013年2月15日金曜日

近所を散歩、ファーマーズ・マーケットで買い物

毎週日曜日、自宅アパートのすぐ近くの通りで、ファーマーズ・マーケットが開かれている。
ファーマーズ・マーケットとは、農家直売の野菜や果物にくわえ、ジャムなど手作り食品を売る露店が集まる催しで、ロサンゼルス郡内の多くの地域で開かれている。
食材の安全性や品質にこだわる人は、ファーマーズ・マーケットでの買い物を好む。

先日、妻と一緒に出かけてみた。
通りの120メートルほどの短い区間を歩行者天国にして、30店舗ほどの露店が並ぶ。

通りの一部を歩行者天国にして開かれる

通りに足を踏み入れると、最初に見つけたのは、小さな移動動物園のようなもの。
ヤギやブタが放されている柵の中で、子どもたちが干し草のエサを与えるなどして遊んでいる。

動物に囲まれる赤ちゃん。かわいらしい。

果物店には、オレンジやイチゴなどが試食用に用意されている。
ライムを10個ほどを1ドルで買った。
男性店員は、客とは英語、仲間の店員とはスペイン語で話していた。
隣の別の果物店は韓国系移民の女性らが仕切っていた。

しばらく歩くと、「ちょっと試食どうですか」と中東系移民のおにいちゃんが、何かディップソースをのせたトルティージャ・チップスみたいなものを手渡してくれた。
おにいちゃんによると、レンズ豆(lentils)をつぶして作ったディップソースで、中東地域では一般的という。
調子にのって12種類のうち、4種ほどを試食した後、ニンニク味のディップソースを4ドルで買って帰った。材料を見ると、ニンニクのほかに、バジル、パセリ、松の実、キャノーラ油を混ぜてつくっているらしい。刻んだトマトなどと一緒に食べると、さらにおいしい。
ヒヨコ豆(chickpeas)をつぶしたディップソースであるハムス(hummus)とはちがうみたいだ。

レンズ豆をつぶしたディップソース


ファーマーズ・マーケットからアパートに帰る道すがら、小さなスーパーマーケットに立ち寄った。
ここは妻が仲良くしているメキシコ人がすすめてくれたメキシコ系スーパー。
一般的なスーパーでもメキシコ料理の食材は手に入るけど、ここは種類も多く、値段も良心的だ。
店内はメキシコの音楽が流れ、もちろん店員も客も基本的には中南米出身者だ。

芋の仲間のユカ(キャッサバ)を購入。コスタリカ留学時代もよく食べた。近所のキューバ料理店で食べたような、ユカの揚げ物を作ろうかと思っている。
1個35円ほどのアボカドも二つ買った。

ユカやココナッツなどメキシコで一般的な食材が並ぶ。
トマトも新鮮だ。この小さくて縦長のトマトは「Roma Tomato(ローマトマト)」という種類らしい。

このスーパーの奥には、テーブルが二つ置かれた食事コーナーがある。
タコスやブリトーなどの軽食を食べることができる。
タコスは1枚1.25ドル。牛肉(carne asada)入りのやつを一枚注文して食べた。
「どこでお金を払うんですか」と女性店員に聞くと、「レジで伝えて」とのこと。完全に自己申告制らしい。そこらへんのゆるさも気に入った。

牛肉タコス。トルティージャは通常2枚ついてくるので、二人で一口食べるのにはちょうどいい。

レジに進むと、スペイン語を勉強中の妻に、「compré un taco(タコス1枚買いました)」って言ってみよし、と言って、バトンタッチ。うまいこと笑顔でレジを切り抜けることができたようだ。


その約2週間後、もっとがっつりメキシコ料理が食べたい、ということで、車で10分ほど行ったところにあるメキシコ料理店「El Super Taco」へ。ここも妻のメキシコ人の友人のおすすめだ。

僕は特製ブリトー(約6ドル)を一つ。妻はタコス3枚(1枚1.25ドル)を注文した。シラントロ(パクチー)やチリソースは取り放題だから、好みで味を調整して食べることができる。

店内のテレビはメキシコの昼ドラ(Telenovela)を放送。店員はもちろんメキシコ人だが、客層は多様だ。

特製ブリトーは、牛肉、グアカモレ(アボカドで作ったペースト)、豆、米、レタス、トマト、サワークリームがはち切れそうなくらい入っている。食事の最後の方は、こちらの胃袋もはち切れそうになった。

かなり大きなブリトー。注文から5分ほどでテーブルまで持ってきてくれた。

これまでタコスは自宅で作ることが多かったけど、1枚1.25ドルなら、メキシコ料理店で食べた方が安くつきそうだ。また、メキシコ料理欲が高まったら、食べに行こう。

2013年2月2日土曜日

市民権への道筋、非合法移民問題、アメリカ移民制度改革

オバマ大統領が1月29日、移民制度改革への姿勢を明らかにした。

現在、アメリカには1100万人以上の非合法移民が暮らしている。非合法移民問題に対応するための移民制度改革の実施は、オバマ大統領の主要政策の一つだ。

オバマ大統領の改革案は主に、①国境警備の強化、②非合法移民労働者の雇用を防ぐ取組、③非合法移民に対する市民権付与(合法化)、④外国出身の企業家、大学院生のアメリカ国内における起業や就職の支援、の4点だ。

これは1986年、レーガン大統領時代に制定された移民改革管理法(Immigration Reform and Control Act)と基本的に似た内容となっている。当時も増加する非合法移民対策として、同法が制定された。

今回の改革案と1986年法で異なる点の一つは、③の項目において、幼いころに親に連れられてアメリカに不法入国した若者たちに対して、軍隊に入隊、または大学に入学した場合に、合法化手続きを迅速に行うという点だ。これはオバマ大統領が一期目の2010年、通称「ドリーム法」の法案として提出したものの、共和党の反対で廃案となっていた。

ということは、また今回も廃案になるんじゃないか、と思う人もいるだろう。もちろん、その可能性はなくはないとしても、今回はちょっと状況がちがう。


昨年11月の大統領選では、失業率8%という現職にとっては厳しい状況にあったにもかかわらず、マイノリティ集団、女性、また若者を中心に幅広い支持を得たオバマ大統領が大差をつけて再選を果たした(白人男性の4割もオバマ支持)。

選挙戦において、オバマ大統領は非合法移民の若者を合法化する必要性をくりかえし訴えた。それも含めて再選を果たしただけに、オバマ大統領の移民制度改革に対して、共和党も簡単に無視できない状況になってきたわけだ。

くわえて、国勢調査局は2042年には白人の人口比率が過半数を切ると予測。多くの移民を抱えるマイノリティ集団を無視して、今後の選挙を有利に進めることはなかなか難しくなってきていることも、共和党の姿勢の変化に大きな影響を及ぼしている。

それもあってか、今回のオバマ大統領のスピーチ前日に、上院の超党派グループが、大統領の政策とほぼ同様の政策案を発表した。共和党のジョン・マケイン上院議員もメンバーの一人だ。ただ、民主党と共和党が上院ほど協力的でない下院では、今後、どういう議論がなされるのか。
オバマ大統領が「改革の詳細については非常に厳しい議論となるだろう」というように、まだ楽観はできない状況といえるだろう。


しかし、今回の上院グループとオバマ大統領の発表は大きな一歩でもある。
ロサンゼルスを中心に活動する移民支援団体「CHIRLA」の担当者は、地元テレビ局のニュース番組に出演し、「市民権取得への道筋(a pathway to citizenship)」という言葉が大統領の口から聞いたのは、この20数年間で初めてだ、と期待を込めていた。

・昨年11月の大統領選挙の関連記事は、こちら