人口は約460万人、面積は日本の7分の1、言語はスペイン語、主要な宗教はカトリックだ。
豊かな自然環境や高品質なコーヒー栽培にくわえ、軍隊を持たない国としても知られている。
僕は2000年2月~2001年1月、高校3年生の時期に、この国のオロティナという町で留学生として生活した。
それから13年たった今月上旬、妻と一緒に再訪した。
2004年に一度訪ねて以来、8年ぶり3回目だ。
このブログの番外編として、コスタリカにおける移民労働者について、簡単に書いておきたい。
◇
1月4日午後2時、コスタリカのフアン・サンタ・マリーア国際空港に到着した。
ホストファミリーの両親と18歳の弟が空港まで迎えに来てくれた。
コスタリカのあいさつのキスは、どっちのほっぺだったけな、と忘れかけていたが、お母さんと再会すると、自然と自分の右ほっぺをお母さんの右ほっぺにつけてあいさつできた。
男性同士は握手だけど、女性と男性、女性と女性の場合は、ほっぺをつけて軽く「チュッ」と音を出してあいさつする。
空港近くの首都サンホセの街中を少し散策した。
コスタリカの大手パン店といった懐かしい店にくわえ、2000年当時はなかったジーンズブランド「Levi's」の店舗などもあった。マクドナルドの店舗数もかなり増えているらしい。
サンホセの街中では新しい店も増えてにぎやかだ。かつてはタクシーが列をなして排気ガスだらけの地域もあったが、いまは中心部は歩行者天国になっているという=サンホセ、2013年1月4日撮影 |
しばらく街中を歩いていると、お父さんがある方向を指さした。
民族衣装のような服を着た先住民系の女性3人が路上に立っていた。
「彼女たちはパナマのインディオで、最近増えているんだよ。農業労働者として来た人もいるんだけど、多くの人は街中でお金を乞うて生活している」
パナマはコスタリカの東どなりの国だ。
僕が留学生だった13年前、パナマの先住民をサンホセの街中で見かけたことは一度もなかった。
今日の世界では、多くの人々は自分の生まれ育った場所で昔ながらの生活がしたくても、外部から安い商品が入って伝統的な産業が廃れて働き口がなくなるなどした結果、賃金労働者として遠い場所へ移動していく。
中央アメリカの土地と最も深い関係にあっただろう彼女たちも、自分たちの祖先が暮らしてきた場所では十分な生活ができなくなり、それでも何かしら生きていこうと、こうしてサンホセの路上に立っているのだろう。
国立劇場前の広場。よくここで日本人留学生と待ち合わせをした=サンホセ、2013年1月1月4日撮影 |
路上に敷いた布の上に違法コピーしたDVDなどを並べて商売をしている人々もいる。
もちろん路上で無断で商売をするのは違法だから、彼らは警察官が近づいてくると、布ごと商品をくるんで逃げていく。
こうして商売をする人々のほとんどが、コスタリカの北どなりの国から来たニカラグア人だ。
ニカラグア人労働者は1980年代以降、コスタリカ特産のコーヒーやバナナ栽培を支えてきたが、近年は都市部の建設現場などで働くニカラグア人も増えてきているという。
サンホセの街中の公園は、いまでは多くのニカラグア人移民の休憩場所となっている。
サンホセ中心部の公園はニカラグア人移民労働者の休憩場所となっている=サンホセ、2013年1月4日撮影 |
コスタリカにおけるニカラグア人移民の増加は1980年代の中央アメリカの地域事情もかなり影響していると考えられる。
ニカラグアでは1979年に左翼政権が成立したが、アメリカが軍事介入。さらに混乱がひろがり、それまで中央アメリカでも安定していたニカラグア経済は著しく疲弊した。
一般的に、移民労働者は異なる国の間の経済力の差によって生じる。
アメリカCIAのThe World Factbookによると、2011年の一人当たりのGDPはコスタリカが1万1900ドル(世界100位)に対して、ニカラグアは3200ドル(世界171位)と、両国の差は歴然としている。
中央アメリカ人口センター(Centro Centroamericano de Poblacion)によると、コスタリカで暮らす外国出身者の人数は1984年の約9万人から2000年の約30万人に急増し、そのうち約22万人がニカラグア出身という。
ニカラグア人はコスタリカにおける低賃金労働者として社会的に低く見られる傾向にあり、ニカラグア人のアクセントを真似して冗談にするなど、彼らに対する差別もコスタリカでは根強い。
お父さんに「今でも差別はあるんですか」と聞くと、それは残っているとしたうえで、「彼らは本当に一生懸命に働くよ(son muy trabajadores)」と話していた。
ニカラグア人を中心とした非合法移民を取り締まる移民法が2006年に成立した。
農村でも都市でも外国人の安い労働力に頼りながら、彼らを排除する政治的圧力が強まっている。アメリカで働くメキシコ人を中心としたラテンアメリカ出身移民の状況と重なる。
◇
ロサンゼルスに帰る前に、現地の友人が最高級コーヒー「Café Britt Heritage Blend」をプレゼントしてくれた。
コスタリカに留学して以来、コーヒーは自分の生活には欠かせない飲み物になっているだけに、とてもうれしかった。
ロサンゼルスのアパートに戻って、さっそく飲んでみた。
甘いアロマがふわっと広がり、コーヒー独特の苦みもなぜかフルーティにさえ感じる。
コスタリカ産コーヒーが世界で高く評価されているのも納得できる。
同時に、こうしたコスタリカを代表する商品を支えている移民労働者の姿も頭に浮かんだ。
コスタリカの最高級コーヒー「Café Britt Heritage Blend」。まちがいなし。 |
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