この試験に受かって初めて博士論文に向けた調査や執筆を本格的に始めることができる。この段階の院生をPh.D. CandidateやABDと呼ぶ。ABDはAll But Dissertationの略で「あとは博士論文を提出するだけ」という意味だ。
この試験は研究分野にかかわらず、博士課程の学生が乗り越えないといけない関門だ。それぞれの大学や学部で細かい内容は異なる。歴史学部に所属している僕の場合は2年半のコースワークを経た後、アメリカ史、東アジア史、移民研究の3分野で筆記試験と口述試験を受けた。
筆記試験は、学部ビル内の試験部屋に行き、午前8時半から午後5時までの間にパソコンの筆記ソフトを使い、10ページ前後の小論文形式で回答を打ち込む。3分野なので3日間かかる。筆記試験合格後の口述試験では、それぞれの分野の先生方に囲まれ、2時間かけて先生方の質問に答える。
筆記試験には参考資料を持ち込んでいい。重要な本をスーツケースに詰め込んで試験会場に向かった。 |
試験自体も厳しいけど、試験に向けた勉強が厳しかった。
僕の場合は半年間以上かけて250冊ほどの本を読み、自分の専攻分野について幅広い知識を得たうえで、自分の議論も展開できるところまで勉強する。250冊を最初から最後のページまで完全に読むのは時間的に難しいので、それぞれの本の主要な議論を的確に理解するように心がけて読み、要点をノートにまとめていく。時間が足りなくて読み損ねた本は書評で内容を確認する。書きためたノートを見直したり、それをもとにレポートを書いたりして試験にそなえる。さらに試験担当の先生方とミーティングを重ねて理解を深める。
本番の試験では十分に答えきれなかった部分もあったけど、無事に合格することができた。合格した翌日から体調を崩した。翌日からでよかった。
多くの院生は試験合格後、ティーチング・アシスタントをしたり、研究助成金に応募したりして生活費を得ながら、博士論文提出までの数年間を過ごすことになる。
こうした長丁場の受験勉強は日本の大学受験浪人生だったとき以来だと思う。30歳を過ぎてこうしてチャレンジできるのはありがたい。これからも頑張りたい。
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