2014年5月26日月曜日

銃と人種、自由の国アメリカの問題

カリフォルニア州アイラビスタで23日、容疑者を含め7人が死亡する無差別殺傷事件が起きた。

エリオット・ロジャー容疑者(22)は、魅力的な女性と交際できないことへのいら立ちから、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の学生がナイトライフを楽しむアイラビスタで、刃物と拳銃を使って無差別殺人を実行したという。

25日のロサンゼルス・タイムズが事件について詳報している。同紙を読む限りでは、ロジャー容疑者にとっての「魅力的な女性」像にはアメリカ社会の人種関係が大きく影響していたようだ。

ロジャー容疑者はイギリス人の映画監督と中国人の母親の間に生まれ、7歳のときに両親が離婚。その後は母親と暮らしてきたという。しかし、自分が白人とアジア人のハーフであることが、白人女性と付き合えない理由の一つと考えていた。

ロジャー容疑者は「僕は内気で人気もない。何よりも、僕は二つの人種の間に生まれた(I am mixed race)から、他の人と違っていた。僕は半分白人で、半分アジア人。そして、このせいで、ふつうの完全な白人の若者たちに溶け込もうと思っても、それができなかった」と犯行予告の文章に記している。さらに、ある投稿サイトに「黒人の男が4人の白人女性と遊んでいる」と「怒りが込み上げてくる」と他の人種エスニック集団に対しても人種主義的なコメントを投稿していた。

彼の人種を巡る感情は犯行を正当化する理由には一切ならないとともに、もちろんこうした感情をハーフの若者がみんな抱えているわけでもない。彼の人格形成に両親の離婚など他の要因が与えた影響も考えられるだろう。

ただ、今回の事件は、アメリカ社会が白人中心であり、ロジャー容疑者が抱えたようなコンプレックスが生まれる背景があるということを示す一例といえる。彼の父親が関わっている映画業界では、白人を主役に据える映画がたくさんある一方、アジア系を主役に据えた映画はほとんど見当たらない。

さらに、この事件はアメリカ社会における銃の問題とも関係が深い。テレビニュースで、ある被害者の父親が銃規制の必要性を涙ながらに訴えていた。

ちょうど20年前の1994年、同じカリフォルニア州のロサンゼルスで日本人留学生2人が拳銃で殺害される事件が起きた。

日本で暮らす2人の遺族を含む関係者のインタビューを通して事件をふり返るドキュメンタリー映画『Lives Interrupted: The Takuma Ito and Go Matsuura Story』(2012年)が先日、テレビ放送されており、途中からだったけど、たまたま見る機会を得た。犯人と地元ギャングの関係、銃規制の必要性、司法制度の在り方など、凶悪事件の背景にもふれていた。2人の遺族も事件後、銃規制を求める運動を展開したという。

僕が大学で使った歴史教科書によると、1998年、銃で殺害された人の人数は、日本では19人、アメリカではその620倍の1万1789人だった。警察庁資料とガーディアン紙によると、2011年、日本では17人、アメリカではその504倍の8,583人が銃で殺害された(アメリカの人口は日本の約2.5倍)。

銃と人種――アイラビスタの事件を通して、自由の国アメリカに根深く残る問題について考えさせられた。

・アメリカの銃関連犯罪について報じたガーディアン紙の記事は、こちら
・警察庁の犯罪情勢資料は、こちら

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