2013年4月29日月曜日

地下鉄駅のパネル、9カ国語で、市民権ポリシー

ロサンゼルス地下鉄を使って、大学院に通っている。
電車はだいたい10~15分に1本くらいのペースでやってくる。
時刻表はあるけど、利用者は来たら乗るという感じで、あまり気にしてなさそうだ。

駅には、路線図や広告用にパネルが置いてある。
最近、衣替えしたパネルは「Civil Rights Policy(市民権に関するポリシー)」について説明していた。

英語で以下のように書いてある。
The Los Angeles County Metropolitan Transporatation Authority (Metro) operates its programs and services without regard to race, color and national origin in accordance with Title VI of the Civil Rights Act. In addition......
英語の下には、九つの外国語で同じ内容が書いてある。日本語もあった。
ロサンゼルス郡首都運輸局(Metro)は、公民権法タイトルVIに従って人種、皮膚の色、出身国に捉われずに事業を行っています。タイトルVIに加え、Metroは性別、年齢、障害、宗教、医療的な状態、結婚状態、性的指向等に基づく差別を禁止しています。不法な差別待遇を受けたと思う人は、誰でもMetroに対して苦情を提出することができます。Metroの公民権プログラムと苦情提出手続きに関する詳細は、以下の方法でMetroまで問い合わせください:
「結婚状態」という言葉があったり、文末がコロンになっていたり、ぎこちない文章だけど、いろいろな背景の人々が住む都市にとっては、大切なメッセージだ。

中国語、韓国語、日本語など9カ国で書かれたメッセージ。
日本語以外にも、八つの言語で同じメッセージが掲載されている。スペイン語、中国語、韓国語、タイ語、ベトナム語、ロシア語・・・までは分かったけど、残り二つの言語は何語なんだか分からない。

自宅に帰って、運輸局のウェブサイトで確認してみると、アルメニア語とカンボジア語だった。
ロサンゼルスには、両国から来た移民も多い。「リトル・アルメニア」や「カンボジア・タウン」と名付けられたエスニック・コミュニティもある。
このパネルで何語が使われているか見れば、ロサンゼルスの主要な移民集団が分かる。

僕が昨年7月、自宅アパートを探しにロサンゼルスに来たときに利用したタクシーの運転手さんもアルメニア人移民だった。ロサンゼルスのタクシー運転手にはアルメニア人が多いらしい。
自分の娘もアメリカで育って、大学に通っているって得意そうに話していた。

カンボジア人移民には個人的に会ったことはない。渡米する前に、カンボジア人はドーナッツ店を経営していることが多い、と聞いた。ちょうどカンボジア・タウンは沿線にある。今度、地下鉄に乗って訪ねてみよう。おいしいドーナツ店も見つかるかもしれない。

ロサンゼルスの中心部では地下鉄だけど、周辺に行くと線路は地上に出てくる。


2013年4月23日火曜日

アメリカの医療保険、高い診察料を実感

妻が移民支援の英会話教室に通い始めて8ヶ月になる。
友だちも増えている。
最近はタイ人の友だちに、おすすめのタイ料理店に連れて行ってもらった。

「おいしかった」と妻は満足して帰って来たが、翌日から、何やら手足にぶつぶつが出てきた。
かゆみもある。いわゆる、じんましんの症状だ。
はっきりとした原因は分からないけど、彼女だけに症状が出ていることから、きっとタイ料理が原因じゃないかという話になった。料理の中に、それまで食べたことのなかった貝があったようだ。
ネットで見てみると、同じような報告をしている人がちらほらいる。

3日ほど様子をみたが、かゆみもひどくなってきたので、ネットで調べた抗ヒスタミン剤の市販薬を購入した。しかし、一日たっても、あまりよくなっていないので、病院に行くことにした。

ただ、病院に行くとなると、うまく英語で症状を説明できるか心配になる。

加入している保険会社のサイトから、保険会社が提携している医師を探すと、近所に日本人の名前の女性医師がいることがわかった。医師の説明欄にも、英語のほかに「Japanese」と「Spanish」が話せます、と書いてある。
アメリカに多くの国から移民が集まっているので、診察で使える言語も医師の選択の重要な要素となる。

さっそく翌朝になって、その女性医師が所属している病院に電話。しかし、「今週はいません」とのこと。妻も、早く適切な処置を受けたいということで、別の医師の個人医院に電話。「今日の午後1時15分はどうでしょう」ということで、そこで診察を受けることにした。


ふだんは妻の方が僕よりだいぶ健康なので、まさか彼女が先に病院に行くとは思っていなかった
妻も医療保険に入っていたので支払いについては何となく安心していたが、いざ病院で診察を受けるとなると、具体的にどのくらいの金額をどのような方法で支払うのかまったく分からず、不安になってきた。

とりあえず、医院に行った。この医院は、いろんな個人医院が入居している病院ビルの6階にある。妻一人でもなんとか説明できる英語力はあるけど、もしものため、ということで、僕も一緒に診察室へ。10分ほど待つと、若い女性医師が入ってきた。症状を話す。

「よくある症状ですね。飲み薬と塗り薬を出しますね。2週間たって、まだ治らなければ、また来てください」

貝やスパイスは一般的にアレルギーの原因になりやすいことや、食べものアレルギーは大人になってから発症することもあることなども話したが、診察自体は10分ほどで終わった。女性医師の名前からユダヤ系かなと思っていたけど、見た感じからも、おそらくユダヤ系アメリカ人の先生と思う。

そして、肝心のお勘定。
受付の若い女性は「あなたの保険カードに、co-insuranceかco-paymentか情報が入っていないので、こちらから保険会社に連絡して、支払内容が分かり次第、ご自宅に手紙を送りますね。だから、今日は何も支払わなくても大丈夫です」と笑顔で言われた。

けど、この説明ではよく分からず苦笑い。ここは確認しとかないといけないということで、いろいろ聞いたところ、この10分の診察のために、230ドルほど支払わないといけない事実が分かった。日本の感覚からすると、めちゃくちゃ高い。

妻の保険の場合、年間350ドルまでは自己負担となっている。この自己負担分を「deductible」という。その金額を超えた医療費は、基本的には保険会社負担となる。というわけで、大きな手術をしたり、一年に何回も診察を受けたりする人には、年間350ドルだけでいい、という理解になる。逆に、今回、初めて医療機関を利用した妻は、230ドル満額を自己負担しないといけない、ということらしい。

しかし、実際には350ドルの自己負担分を払い終えた後も、毎回の診察料の数十%を自己負担しないといけない。これを「co-insurance」という。
また、毎回の診察ごとに、一定金額を患者自身が支払うことを「co-payment」という。残りの費用は保険会社がカバーする。

いずれにせよ、なんとなくややこしい。ただ、ややこしさは生活していれば、いずれ慣れる。やはり考えさせられるのは、この診察料の高さだ。

アメリカ政府の健康管理局(The Agency for Healthcare Research and Quality)によると、2008年の平均的な診察料は一回199ドル。というわけで、妻の診察料が特別高いわけではなく、そもそも診察料の相場が高いわけだ。オバマ大統領が医療制度改革に取り組んだ理由も分かる。

おそらく日本では「日本の診察料は低すぎる」という医療従事者もいるだろうけど、利用者としては現在の日本の診察料は良心的だと実感した。


診察を終えてから、近くの喫茶店に行った。ジェラートが有名だけど、いつもどおりコーヒーだけ頼んだ。
しばらくすると、女性カメラマンが来店して、宣伝用の写真を撮り始めた。ガラスの器にもったジェラートをばしゃばしゃ撮る。撮影し終えたジェラートは、店長の厚意で、そのときたまたま店内にいた客にふるまってくれた。
カシス、リンゴ、パイナップルの三種類。ふつうに買うと7.5ドルとけっこう高いが、食べてみて納得。フルーツをそのままアイスにしたという感じで、風味も食感もすばらしい。

店を出るときに、レジのガラス瓶にチップを入れた。
いろいろ今日はあったけど、いいこともあるな、と二人で話して帰路についた。

※追記。じんましんは一週間ほどして治った。その後、保険会社から今回の支払金額が通知された。もともとの請求金額は150ドルだったけど、保険会社を通した約50ドルの割引があって、実際の支払いは約100ドルになるとのこと。医院で言われた金額の半額以下なので、とてもよかった。

2013年4月16日火曜日

広がるヴィーガン食、人気のインド料理店

アメリカ大学院の留学生活は課題が多い。
一日中、家にこもって本を読んだり、小論文を書いたりすることも珍しくない。
けど、やっぱり気が滅入るので、無理やり外出するように心がけている。

そんな動機で、先日、近所のインド料理店に行った。
ポップな外観から、この店のインド料理はアメリカ風にアレンジされているだろうと想像できた。
けど、インドっぽいカレーとナンが食べられたら満足なので、かまわず入店。三品にコメとナン、ヨーグルトをつけて9ドルのセットを注文した。

三品といっても、ぜんぶカレーだ。チキンカレー、バーベキュー大豆カレー、ジャガイモカレーを頼んだ。デリ形式なので、商品を見ながら注文できた。インド系の若者らが店を仕切っていた。

ジャガイモカレーはなんとなく懐かしい味。チキンカレーはものすごく甘いカレーで、かなり淡泊な鶏肉を使っている。バーベキュー大豆カレーは、名前からして、明らかにアメリカ出身のインド料理だ。真っ赤なカレーで「辛いですよ」と店員に確認されたけど、あまり辛くない。大豆をつぶした疑似ミートボールがごろごろ入っていた。この疑似ミートボールは慣れなくて、珍しく残してしまった。



というわけで、どちらかというとタンドリーチキンみたいなものを期待していた僕にとっては、やや期待外れだったけど、なぜか店内にはどんどんお客が入ってくる。客層も、人種エスニシティ、年齢、性別にかかわらず幅広い。
なんでこんなに客が来るのか不思議に思っていたけど、この店がベジタリアン/ヴィーガンのインド料理店だと分かって納得した。

アメリカ生活を始めて知った言葉の一つが「ヴィーガン(vegan)」だ。
動物関連の食材を一切食べない人のことだ。

ベジタリアンと何が違うのかというと、ベジタリアンの間では、卵や牛乳は食べる人もいるが、ヴィーガンは一切食べない。徹底している人は、はちみつやゼリー(動物由来のゼラチンが入っているので)も食べない。

1960年に設立されたアメリカ・ヴィーガン協会によると、「人間とその他の生き物の倫理的な関係」を重視することがヴィーガン食の基本らしい。
そこにはインド発祥の宗教における「アヒンサー(不殺生)」の精神も組み込まれているという。

僕もアヒンサーの精神は重要だと思うけど、好きな料理は中国料理と韓国料理なので、この店の料理がなんとなく物足りないと感じてしまったのも仕方ない。チキンカレーがあったのは、ヒンドゥー教徒の一部では鶏肉を食べることが許容されているからだろう。また、僕みたいな雑食者の要望に応えることもできる。

僕がヴィーガンという言葉をよく聞くように、ヴィーガン食は近年、一部の人が実践する特殊な食事ではなく、一般的な食事として広がっているようだ。
その背景には、動物性脂肪やタンパク質の摂取が健康に悪影響を与えることが医学的に主張されたり、畜産業における動物の虐待に抗議する声が広がったりしたことがあるらしい。

というわけで、ヴィーガン食を実践する人の理由も程度もいろいろあるけど、こうして実践する人が多いからこそ、このインド料理店もこれだけ人気があるんだろう。

英語版ウィキペディアで「ヴィーガン」と調べてみると、巻きずしもヴィーガン食として紹介されていた。インド料理も日本料理も、アメリカでは一般的なエスニック料理として受け入れられている。もともと穀物や野菜(日本料理の場合、海藻も)だけを使った料理が多いことも、ヴィーガン食が普及しているアメリカで、インド料理や日本料理の人気が高い理由の一つかもしれない。


余談だけど、このインド料理店に行く前に、おしゃれな調理器具・食材店に行った。
冷凍食材コーナーに行くと、冷凍マグロの下に、冷凍カエルが置いてあった。
カエルはフランス料理店で一度食べたことがあり、とても美味しかった記憶がある。
肉食も奥が深い。植物であれ動物であれ、日々、感謝していただきたい。

冷凍マグロ(写真上)と冷凍カエル(写真下)。カエルは4匹で10ドルだった。

2013年4月1日月曜日

復活祭のミサ、カトリックの洗礼儀式、メキシコ系地域

メキシコ人男性の友人の赤ちゃんがカトリック教会の洗礼を受けるということで、洗礼の儀式に招待してもらった。赤ちゃんは生後4ヶ月だ。目がくりんくりんで、とてもかわいらしい。今日はドレスのような服を着せてもらっていた。

赤ちゃんが洗礼を受けた教会は、メキシコ人移民が集住している地域にあった。
洗礼儀式の前には、毎週行われているミサがあった。
この日は復活祭(イースター)だったので、多くの信者がミサに参加していた。

ミサは完全にスペイン語で行われていた。神父が祈りの言葉を述べたり、楽団が讃美歌を歌ったり。この日、誕生日を迎えた女の子がいたので、神父が祭壇近くまで呼び寄せ、参加者全員でお祝いの歌を歌ってあげていた。

復活祭当日のミサには多くの地域住民が参加し、座席が足りず立ち見の参加者もいた。

ミサの最後には、神父が教会を出て入口前に立ち、続いて教会を出てくる信者を待ち受け、それぞれに「Happy Easter」などと声をかけていた。
ちょうどそのタイミングで、軽食やアイスクリームなどを販売する自動車や手押し車が教会前に現れ、参加者らは何かしら子どもらに買い与えていた。

ミサが終わるころに教会前にやってきた手押し車のお菓子屋さん


ミサが終わった午後1時、友人の赤ちゃんの洗礼儀式が始まった。
代父母の男女2人が赤ちゃんを抱え、神父が赤ちゃんの頭に水をかけ、友人夫妻はすぐそばで見守る。
この儀式によって、赤ちゃんは正式にカトリック教徒となる。

代父母は、もしも赤ちゃんの両親が他界してしまったような場合、彼らに代わって赤ちゃんを育てる重要な役割を担う。
スペイン語で、代父はパドリーノ(padrino)、代母はマドリーナ(madrina)と呼ばれる。英語では、代父はゴッド・ファーザー(god father)、代母はゴッド・マザー(god mother)という。

教会には、友人夫妻の両親や姉妹、また友人(僕と妻も含め)も出席し、赤ちゃんがカトリック教徒になったことを見届けた。
赤ちゃんは水を頭にかけられたときは、ちょっと驚いて泣き出しそうになったけど、基本的にはずっとにこにこ興味深そうに周囲を見ていた。

友人夫妻は、ふだんはこの教会には来ないらしい。ただ、復活祭と儀式の日取りが重なったため、近所の教会では手の空いている神父がおらず、自宅から一時間ほど離れたこの教会に洗礼をお願いしたという。

いずれにせよ、そのほとんどがカトリック教徒であるメキシコ系アメリカ人らは、こうした儀式を通して、信仰心だけでなく、家族の絆も強めていっているようだ。


洗礼儀式が終わった後、教会の近所を車でぐるぐる回って様子をみた。
低所得者向けの団地も整備されていて、生活はしやすそうだった。

メキシコ系アメリカ人の間では、壁画(mural)を描く伝統がある。この地域にも、いたるところで壁画を見つけた。
ある壁画(①)は、地域の多目的施設の外壁に描かれていた。メキシコの先住民文化に対する誇りにくわえ、アメリカ国内で生きていくうえでの教育の重要性などがモチーフになっており、かなり見ごたえがあった。

① この壁画は、ちょうど低所得者用団地の玄関を出た正面にある。圧巻だった。
② この壁画も、マヤ文明などメキシコの先住民文化をモチーフにしている。


ちょうどこの日(3月31日)は、1960、70年代を中心にメキシコ系アメリカ人労働者の権利拡大運動を展開したセサル・チャーベス(Cesar Chavez、 1927~1993)の誕生日。大手検索サイト、グーグルのホームペイジのデザインは、チャーベスの記念したものになっていた。

セサル・チャーベスの86回目の誕生日を記念したグーグルのホームページ