「WE ARE AMERICANS*」というコピーの下、「*Just not legally」と添えられている。
彼らの多くは、幼いころにビザなどの合法的書類がないまま、家族とともにアメリカに入国し、そのまま「アメリカ人」として育った若者たちだ。ただ、彼らが「*Just not legally」というように、法律的には「アメリカ人」ではない。
そんな彼らはしばしば「illegal aliens(不法移民)」と呼ばれてきた。しかし、この呼称は犯罪性を示唆するネガティブな響きが強いため、現在は「undocumented immigrants(便宜的訳語:非合法移民)」と呼ばれることも一般的になってきた。
アメリカでは現在、このような非合法移民が約1150万人いるという。
すでに社会の一部であり、彼らの労働力がないと成り立たない産業も少なくない。そして、もちろん、その中には多くの若者も含まれている。「不法移民」である限り、見ず知らずの「母国」へ強制送還される心配は尽きないし、教育や就職で不利益を被ることも多い。
「アメリカ国籍じゃないなら、アメリカ人じゃないでしょ」と思う人もいるだろう。けど、アメリカで育ち、アメリカの言葉を話し、アメリカにしか友達がいない人たちを外国人として扱うこともまた不自然だ。この記事は、非合法移民の若者たちが写真付で「カミングアウト」することで、「アメリカ人とは」と読者に問いかけている。
この特集記事が掲載された背景には、一人のジャーナリストの挑戦があった。
ホゼ・アントニオ・バルガス、31歳。ワシントンポストなどで活躍し、アメリカ・ジャーナリズムにおける最高の賞であるピューリッツァー賞も受賞した優秀な記者だ。実は、そんな彼も非合法移民の一人。12歳のとき、フィリピンからカリフォルニア州に渡り、祖父母のもとで育つ。16歳で運転免許証を申請したとき、それまで本物と思っていた自分の永住権証明書(グリーンカード)が偽物だと、免許事務所の職員に指摘され、はじめて自分の置かれた状況が分かったという。
「アメリカ人」の意味について語るホゼ・アントニオ・バルガス(写真は、彼が立ち上げた団体「Define American」のサイトhttp://www.defineamerican.com/より) |
同じ状況におかれた人々がカミングアウトしていくことで、「不法」というネガティブで偏ったイメージが壊れていく。その結果、社会は彼らの状況を理解しはじめ、むしろ彼らを同じ国に生きる仲間として守るようにさえなる。ホセの挑戦には、そのような信念が込められている。
この特集記事を読んで最も印象的だったのが、ホゼのジャーナリストとしての切り口の鋭さだ。「結局、アメリカという国は私たちをどうしたいんだ」という本質的な問題に、体当たり的でありながらもスマートな取材を通して迫っていくところは、ここで細かく書いては味気ないので、ぜひ一読していただきたい。
もちろん、「〇〇人とは」という問いかけは、日本を含め、あらゆる国や地域に住む人々への問いかけでもある。